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第5話「白子とご主人様の戦闘準備」 「ご主人様にお願いがあります」 三人でのんびりくつろいでいたとき、白子が妙にかしこまって俺に声をかけた 「ん? なんだ? 改まって」 「実は私…。バトルに、参加してみたいんです!」 「ぎゃにぃい!?」 「し、白ちゃん!?」 まさか、こんな事を言うとは… 「黒ちゃんが毎日うなされてて、私たちにはどうすればいいのか分からない…」 「それは俺だって考えている。でも…」 「そんな、だって…。白ちゃんまで怖い目にあうこと無い!」 あわてて止めようとする俺達二人を白子はかぶりを振って静止する 「一杯、考えたんです。…私も、一度戦場に行ってみたら…何か分かるかも…」 白子が一瞬うつむくが、すぐに凛と顔を上げ 「もう、決めたんです」 その表情を見て、俺も黒子も、白子の説得は不可能だと察した しばし沈黙が流れ、やがて意を決したように 「ボクも、出る!」 「黒ちゃん!?」 「ボクが原因なのに、白ちゃんばっかりにやらせることなんてできない!」 俺は頭痛を感じたが、戦場の恐ろしさに立ち向かうことで黒子のトラウマも軽減されるかもしれない そう思えば、俺に出来ることはたくさんある 「タッグマッチの部門もある。二人ペアで参加するのがいいだろう」 「ご主人様…!」 白子がとがめるような声を出す。過保護な部分がある彼女は黒子を止めるべきだと考えているんだろう しかし、俺はそれを黙殺し、 「それと、二人に、新しい名前をつけてあげよう」 「ご主人様?」 「え? なんで?」 「せっかく試合に出ると決めたんだ。それなのに白子黒子じゃあまりにおざなりだろ?」 「あ、やっぱり自覚あったんですね…」 「じゃあ、ご主人様はボクが試合に出るのに賛成してくれるんだ!」 「ああ、いずれこういう日がくるかもと思って考えていた名前があるんだが、…マリンとアニタってのでどうだ? 白子がマリンで、黒子がアニタだ」 「マリンと、アニタ…ですか」 「いい名前です! 気に入りました!」 「そうか、気に入ってくれたか…。なら、お前達が史上最強の神姫として君臨できるような武装も用意せねばならんな…」 「は?」 「えっと?」 「クククク、待っていろ二人とも、俺が持つすべての技術を結集して究極の装備を開発して見せるぞ! フフフフフ、ハァーッハッハッハッハッ!」 「ご主人様!?」 「き、気を確かにしてください!」 なんか二人が心配していたが、俺は体中にやる気とアイデアが満ち溢れるのを感じていた ―――次の日の夜 「う~、ご主人様遅い…」 いつに無く落ち着きが無い白ちゃん…じゃなかったマリンちゃん 確かにちょっと遅いけど、まだ電車一つ分くらいしか遅れてない 「マリンちゃん…探しにいっちゃだめだよ」 ボクは面白くなって、ちょっと意地悪な声を出しちゃう それにマリンちゃんがぷぅ、と頬を膨らましてちょっと怒ったような声を出そうとした瞬間 バターーン! という、玄関を蹴り開けるような音が響き、 「ただいまぁ!!」 いつもと比べて異様にパワフルなご主人様の声が響く 昨日はひたすら紙にボクたち用武装ユニットの設計図を書きなぐって一晩明かし、 始発が動き始める時間には「早速上司を説得だ!」とか叫んで家を飛び出していったので非常に不安だったけど、一日中ハイテンションは続いたようだ 「マリン! アニタ! 所長を説得して、スポンサー契約を取り付けたぞ! これでうちの研究所が総力を上げてお前たちのバックアップを行う体制になった!」 急な展開に思わず呆れるボク。マリンちゃんは一瞬ふらついたが、すぐに気を取り直してご主人様に噛み付く 「何でいきなりそこまで話が大きくなってるんですか!?」 そんな言葉をご主人様は全く無視してまくし立てる 「二人のための武装も、マリンのは4日後、アニタのも8日でロールアウト予定だ」 完全新規設計の武装ユニットをたった4日で…。でも 「ボクのは後なの?」 「ああ、それだけでなく、マリンのはサード基準、アニタのはセカンド基準の出力になっているから、セカンド昇格まではマリン一人で戦ってもらう」 「ど、どうしてですか?」 「マリンちゃんだけ戦わせるなんて…!?」 「厳しいことだが、これはスポンサー契約の条件の一つだからどうにもならんことだ。ついでに3ヶ月以内にセカンドに昇格できなければスポンサー契約は打ち切られる」 「たったの?」 「一人でやるのに、それは短いよ!」 あまりに無茶な条件にボクは大声を出してしまう 「大丈夫、サードからセカンドに上がった最短レコードは1週間だ。まあ、シングルで、八百長試合の噂が耐えない奴だったが…。それに比べれば競技人口の少ないタッグなら3ヶ月くらいでいける、かもしれない」 「でも一人でなんて!」 「まって、アニタちゃん…。いいの、私やる。ご主人様が出来るって言ってるんだから、それを信じる」 「マリンちゃん…? だって戦うのって危ないんだよ! 怖いんだよ!」 「わかってる。でも、怖いものから逃げちゃ駄目なの。アニタちゃんもそれに立ち向かうって決めたんでしょ?」 「マリンちゃん…」 「大丈夫、サードはヴァーチャルが基本だから、危険は無い、はず」 無責任な事を言うご主人様 「ご主人様…!」 ボクは思わず咎めるような声を出してしまう。でもマリンちゃんはそれを制して 「アニタちゃん、ご主人様を信じられないの?」 「そうじゃないけど…!」 「そうだ、俺を信じろ。俺の何よりも誇れることは、技術力だ。この世の何よりもな」 そう力強く宣言するご主人様。ボクは長らく黙っていたけど 「…はい」 と頷くしかできなかった 「とりあえず、武装データは先行して完成させてきたから、これでヴァーチャルトレーニングできるぞ」 といって、押入れから訓練機を引っ張り出してくるご主人様。そんなの持ってたんですね… 「それと、これもだ。昔、知り合いの研ぎ師に遊び半分で作らせたものだが、本物の業物だ。これも信頼しろ。俺の次にな」 そういって取り出したのは二振りずつのナイフとマチェットだった。鈍く輝き、見るからに鋭そうな… 「これは…?」 「作ったのは俺じゃないが、設計自体は俺がした。製法も素材もこだわってあるから、硬度も切れ味も並じゃないぞ」 「ご主人様…、本当はボク達にバトルさせたかったの?」 「まあ、そういう気持ちも無くは無かったが、バトルにはあまり興味ないといわれて諦めていたよ」 そういって笑ったご主人様。いつも以上に生き生きしているように見えるけど気のせいだと思っておこう 「とりあえず、俺は出来る事をすべてやった。後はお前達に任せるよ」 「はーい!」 「ご期待に沿えるよう努力します!」 誤配送のときには感じなかった、ゆっくりと温まっていく高揚感。戦うのは怖いけど、ご主人様とマリンちゃんが一緒なら大丈夫 そんな気持ちがボクの心の奥底から湧き上がってくる。やっぱり、ボクも武装神姫なんだ… その夜、久しぶりに、ボクは悪夢を見なかった 続く
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第六幕。上幕。 ・・・。 2035年12月31日。千葉峡国神姫研究所。 大晦日の夜も既に更け、除夜の鐘が遠く響こうとする時刻。既に所員たちのほとんどは帰途につき、その研究所も一年を終えようとしていた。 常夜灯以外の電源が落とされた研究所。しかしそんな沈黙が支配する中で、今尚、所長室には明かりが灯っていた。 小幡 紗枝は、彼女の体躯にしてみれば十分に大き目の事務机の前に座り、その目の前に置かれてあるクリアーカバーで蓋をしたケースに静かに視線を向けていた。 幾度と無く、それに手を触れ・・・しかしやがて離し、大きな溜息と共に椅子に深々と座りなおす。 こんな事を、彼女は一週間も続けていた。 その器の中には目を閉じて眠っているような一体の神姫。違う・・・眠っているのではない。そのCSCは二度と起動する事は無く、その瞳は二度と開かれる事は無いのだから・・・。 そう、『死んで』いるのだ。彼女は。 「ゼリス」 小幡は呼びかけると、その年齢相応の皺が刻まれた顔を両手で覆った。 「・・・」 エゴだろうか。 これまで数十体という神姫のボディを、『失敗作』という名目でCSCを埋め込まず、起動さえさせずに分解してきた自分が。 最早『死した』神姫を、かつての自分のパートナーであるという理由だけで・・・それを分解する事を躊躇うとは。生前の彼女がそれを願っていたというのに。いや、だからこそか。何故、彼女がそんな事を、こんなに辛い事を自分に託したのか。それが理解できないまま。 これほどに。自分は未熟であったのか? ゼリスが遺したZFというファイル。そこには、確かに彼女からのメッセージが込められていた。『自分のボディを分解してほしい』と。『娘たちに、それを受け継いで欲しい』と。 だが、果たしてそれを、簡単に受け入れる事が出来るだろうか? 貴女の『心』を、最後まで・・・私は見る事が出来なかったの? 目をやれば、変わらず。口元に静かな笑みさえ湛えて彼女は永眠についている。美しい翠の髪も。草色のスーツラインも何も変わらない。その合成樹脂によって作られた体を横たえ、昏々と眠り続けている。 この姿を、この姿を失えと? この姿を、私自身に壊せと? そう言うのですか? そんな事を託すなんて。 いや、かつて、我武者羅に研究に打ち込んでいた自分ならば可能だろう。だけど。今、ここにいるのは。 (貴女のパートナーなのですよ?) 幾度目かの溜息。出来ようか。そのようなことが。 そもそもは、探していたのだ。 彼女たち、神姫という人工の存在が。それでも時折見せる『心』の場所。CSCと呼ばれる多大なブラックボックスを内包した超集積プログラミングシステム。それは、口調や性格のパターンを複雑化し、限界まで叩き込んだ人工AIの一種。 組み合わせさえ選べば、性格、精神年齢さえ自在に変える事が出来る、その技術の結晶たるCSC。だが、時として人が作り上げたプログラムが介入できないレベルにまで神姫は・・・この世に現れてからずっと、明らかな不確定要素的な因子を示していた。 それを、小幡はあえて『心』と呼び、解明を行おうとしていた。 やがて。 言語、通訳。朗読や踊り、歌など。『芸術・文化的要素』を強化した神姫シリーズが発足するにあたり、その一つのタイプ・・・通訳等での活躍が期待される言語・発声能力特化型神姫のプロトタイプを峡国研究所が製作し、小幡自身がそのテスターとして『彼女』を受け取る流れになった。 それまで個人では神姫を迎えた事の無かった小幡にとっての、言うなれば、長く『彼女達』と付き合ってきたにも関わらず、『初めての神姫』。 ようやく完成したタイプナンバーはCRZR-C003。プロトタイプ・・・MMSネームを『クラリネット』と名付けられ、小幡の手に渡った。 心の究明の手伝いにもなるだろうと、軽い気持ちでそれを引き受けると。彼女はCSCを生まれて初めて、自分の手でボディにセットした。 そして。その銀の眼を、ゆっくりと開けた神姫が最初に行った行動は。 CSCに基本として導入されているはずのマスター初期確認でもなく、ネーミングのセッティングでもなく。また、自身のコードナンバーを読み上げる事でもなく。 微笑みを・・・優しく浮かべる事だった。 『はじめまして、マスター』 美しい声でそう言って。 小幡の中で、それまで積み上げてきた全てが崩壊していくと同時に。何かが大量に流れ込んできて。意味も解らず、突如としてぽろぽろと涙を流しはじめた彼女を、慌てて『ゼリス』は宥めていた。 (・・・それまで。私は常に無機質な世界を見つめていた) 数式とデータによって支配され、怒濤の様に流れていく歴史に取り残されまいと。虚ろな瞳で急くように走り抜けていた。 それがこの世界の法であると信じて。 だが、彼女と出会い。彼女と暮らす事で。時間という風が緩やかになっていく。 相も変わらず忙しい日々。神姫のパーツ開発、また、武装神姫プロジェクトの発足によるテスト武装の試験。 それでも。その風は緩やかに吹いていた。 『風に、憧れます』 そう言った彼女に、風になりたいのかと聞いた事がある。 『いいえ? 風になりたいのではなく。風に憧れるのです』 謎々のような事を言って。ゼリスは笑った。 少し不思議な感覚を有している彼女は、しかし研究所の皆からも愛されていた。 やがて。 第一期武装神姫の武装テスト中、彼女のCSCリンクシステムに異変が発見された。 記憶の消失。どうしようもない欠陥の発覚。 泣きながらも真実を伝える私に。彼女は微笑みかけたのだ。 『・・・とても、とても嬉しいです』 何故? どうしてかと問う私に。 『だって。これだけの想いを、私は受けているのでしょう?』 そう言って、ようやく彼女は静かに泣いた。 想いを『受けている』? 私は、その感覚を理解する事は出来ず、戸惑いと悲しみに打ちひしがれるだけだった。 ・・・。 ふと、涙の温かさを感じ。小幡は顔を上げた。 涙。 そうだ。いつから、私は涙を流せるようになったのだろうか? ただ、灰色で。無機質な日々でしかなかった。彼女に会うまでの、それまでの生きてきた長い日々。 その世界を。風が吹きぬけるように・・・色取り取りの美しい世界にしてくれたのは。他ならぬゼリスだった。 ほんの少しの、ちょっとした事で心が揺れる事を知り、喜ぶ事を覚えたのも。 海を眺め、空を見上げ、移り変わる世界に思いを馳せながら、夢を描く事を知ったのも。 頬を濡らす涙を流す事を教えてくれたのも。 全ては・・・彼女と共に、歩み始めてからではなかったか。 『・・・マスターは』 ふっと、思い出したようにゼリスは銀色の瞳で私を見つめた。 『とても人らしいヒト、ですね』 いつものように謎々のような事を言う彼女。 私は最初から人ですよ? と困ったように問い返した私に。 『えぇ、けど。最近とってもヒトらしいなって、思うんです』 そう言って、イタズラっぽく。彼女は笑った。 「そうですね・・・」 ゼリスと出会い。 「私の方・・・だったのですよね」 『神姫』である彼女に照らされるように、それまで何事にも急き走り続ける事しか出来なかった私が。 「貴女と出会う事で」 ・・・共に生きる事で。 「心と、心が触れ合う事を知りました・・・」 涙がケースに滴り落ちる。 「『心』を生む事が出来たのは、私の方でした」 人である私が。神姫であるゼリスから。 人としての心を貰って。 『人になれた』のだ。 ・・・。 小幡はコンピュータのモニタートップの『ZF』と名付けられたファイルを見つめていた。 ゼリスの言葉。ゼリスの声。ゼリスの姿。全て、そこには宿っている。 そして。遺志さえも。このちっぽけなプログラムの中に。 小さくても。そこには確かに翠色の風が、宿っている。 ・・・。 「翠?」 ふっと。 小幡は、目の前で眠り続けるゼリスの髪に目をやった。美しい髪色は、全く変わることなく艶やかに流れ、その肌は今も生前の美しさを保っている。 「・・・」 瞳が揺れた。 彼女は、ようやく。 その、長きに渡る研究と。自分が抱いてきた謎の解を知った。 (『違う』) 人ならば既に、色も何もかも変わっているだろう。 その身は荼毘に伏され、美しい姿を残す事も無く、今は写真を眺めるくらいしか出来ないだろう。 彼女達は人ではない。神姫だ。それは解っていた。それは理解していた。 だが、いつから? いつから勘違いをしていたのか? その体は人工の物。作り出された美しい樹脂の結晶。 そして・・・その『心』もまた、『人間に似せられて人工的に作られている』と。そう信じてしまっていた。それは間違ってはいない。CSC、ヘッドコア、ボディユニット。 全ては人が生み出し、人が作り上げた存在である。 だが・・・だが、それでも? それでも、彼女たちの心を人が作ったと言えるのか!? 「違う・・・」 今度は口をついて出た、その言葉。 神姫は。 『神姫の心を有している』。 『心』を解明しようと。その心が生まれる瞬間を知ろうと。彼女を迎えた時には。 『神姫の心』を、『ヒトの心のミニチュア』としか考えず。彼女はいつしか・・・ただ、その既に出ていると思った結論を受け入れようとして、それをただ科学的に証明しようとしていただけだったのだ。 人の心を元に。神姫の心があると信じていた。 「そうではない・・・そうですね?」 答えぬパートナーに、小さく笑いかける。何と愚かなマスターだろう。そのような事は、貴女がずっと。ずっと伝えてくれていたのに。 『神姫には。神姫としての。ツクリモノではない。確かな心がある』。 小幡は後悔の涙を流した。 「許してください・・・ゼリス」 私はずっと、『人の心』の尺で全く違う存在を計ろうとしていたのだ。どれほど、心の解釈を彼女に押し付けただろう。 「貴女は・・・全てを知っていたのでしょうね」 ゼリスは、それらを神姫の心で受け止め、そして。それこそ命尽きるまで答えてくれていたのだ。 だとすれば。 「・・・」 彼女の遺志。それもまた・・・人の心では計れぬ行為なのか? 「貴女は・・・『神姫』として、何をしようとしているのですか?」 問いかけ、その心に想いを馳せる・・・。 その遺志は、彼女の・・・『自分を残す事』。 小幡の動きが止まった。浮かべていた哀しい笑みが震えるように崩れ、目が見開き、驚愕の面持ちに変わっていく。 「まさか・・・」 それは。神姫である彼女であればこその。 『継承的行為』。 「あ・・・あぁっ・・・?」 小幡はケースを、震える、その少し節くれだった手で抱き上げた。少し揺れ、中のボディがカタリと壁にぶつかった。 「・・・貴女は・・・!」 眠り続けるパートナーは静かな微笑を湛えている。 人は死して名を残すという。子を残し、身体は自然に帰し、いつしか大地に戻る事が出来る。 ・・・神姫は。作られた体の神姫は。その身体を残す事しか出来ない。その美しい、姿だけは残さんとする。 愛してくれた主の為に、大切にしてくれたマスターの為に。彼女達はたくさんの思い出が詰まった身体を残すだろう。 「・・・そう」 『身体しか残せない』のだ。 彼女達はそれ以外に、それこそ何も抱かずに生まれてくるのだから。母も父も、子も無く。ただ、生まれてくるのだ。 自分が自分であったという証拠。それさえも。貴女は。後の神姫に、渡してくれと。 『そんなに驚いた顔をしないでください。ずっと前から決めていました』 ・・・。 その決断を下して。どれほどの恐怖と戦いましたか? 死した後、自分の身体が切り刻まれる事への恐ろしさは、人の比ではなかったでしょう。 どれほどの哀しみを抱きましたか? 自分が『いなくなる』という事を思い、その小さな身体で、絶たれる未来に・・・どれほどの哀しみを宿したのですか。 どれほどの涙を・・・私達に見せないように流したのですか? それは神姫にとって、『全てを失う』に等しい行為なのに。ただ。『母』として。姿も知らぬ『娘達』に心を込めた身体を贈る事を。 『身体を失っても。マスターや皆さんと一緒に、『心』があります』 ・・・。 小幡は、止め処なく零れ落ちる涙の中。確かにその声を聞いた。 信じていたのだ。科学的に何も実証されず。人間でさえ信じようとする者が少ない、その、掛け替えの無い物。 『心』。 それは。彼女が。 恐らくは世界で始めて、自らの意思で『死す事を選んだ』神姫である彼女が。 誰よりも優しく、妹たちを、娘たちを見つめていた彼女が。 子を為す事も出来ず、自身の未来さえ絶たれた一体の神姫が。辿り着き、望んだ、最後の結論。 彼女に許された唯一の・・・『未来を紡ぐ方法』だったのだ。 ゆっくりと小幡はケースを手に立ち上がった。 「ありがとう・・・」 貴女を作ったのは私。 私の心を生んでくれたのは・・・貴女でした。 返さなくてはならない。この恩を。 私を人にしてくれた貴女へ・・・身を裂かれる様な思いに貫かれても。『人の心』が、苦しいと悲鳴を上げても。 貴女への恩に報いましょう。 未来を、紡ぎましょう。 なおも重い足を、それでも作業場に向ける。 少し疲れたような微笑を浮かべ、ケースを開けて。翠の髪を指先で軽く梳かす。 「受け継ぎましょう・・・」 貴女の、遺志を。 『人としての心』を持つ私が。貴女の『神姫としての心』を・・・受け継ぎます。 母として。友として。 そして・・・『娘』として。 ・・・。 夜が白々と明け始める頃。作業は終了した。銀色の小さなケースを載せた台車を押して、小幡は酷い表情で再び所長室に戻ってきた。 長く息をつき首を振る。想像通り、それは凄まじい精神的苦痛を伴った。心が砕かれるような思いの中。それでも彼女は・・・全てをやり遂げた。 CSCの神経リンクとの硬着。今の規格とは違いすぎる・・・完全な旧式化で使えないパーツ。最早、ほとんどの部分が利用できないと覚悟していたが。それでも少しながら、利用可能な部位を取り外す事が出来た。 銀色の、小さなケースを机に並べていく。 数は僅かに5つだけ。 どんな神姫がこれを受け継ぐのだろう? そんな事を思い、ふっと、小幡は苦笑する。 こんな旧式のパーツ、きっと『いらない』と笑われるだろう。普通に考えれば。 だから、これを受け継ごうとする、受け継ぐ神姫は・・・貴女に似て、少し、変わっているのでしょうね? ゼリス。 まだ姿さえ知らぬ・・・彼女たち、『ゼリスの娘たち』は。 一つ目のケースには『喉』。 それはクラリネットタイプの特徴の一つ。声帯を内包した部位。様々な言語を使いこなす・・・透き通るようなあの、声量豊かな声。 この喉を受け継ぐ神姫は・・・その美しい声を響かせ、それに乗せて『心を伝える』事になるだろう。 二つ目のケースには『脚』が一対。 少し古い感じのするデザイン。ゼリスのスーツカラーがそのまま残る場所だ。堅めの足裏でカタコトと、小気味良い足音が今はもう懐かしい。 この脚を受け継ぐ神姫は。どれほどの困難があろうとも。強い意志で『心と共に歩む』だろう。 三つ目のケースには『手』・・・。 高質樹脂ではない。少し表面がざらついているのが特徴の合成樹脂。どことなく、彼女らしい素朴な感じのする小さな手。 受け継ぐ神姫は、全てを優しく抱きしめて来た手で、『心を包む込む』事だろう。 四つ目のケースには『眼』が入っている。 光を宿す銀色の瞳・・・相手の目を見つめて話す事を心がけていた、彼女の柔らかな、表情豊かな視線を宿した部位。 受け継ぐ神姫は、目を逸らしたくなる過去さえも乗り越え・・・真っ直ぐに『心を見つめる』神姫だろう。 そして・・・。 最後の一つのケースを机に置く。それだけは少し小さ目なケース。そして他の物よりも、遥かに丁重に扱われるように、多重のケースに入れられている。 (・・・。・・・) 何故、この部位が全く損傷無く取り外せたのか。CSCが活動を停止した今。それが取り外せたのは奇跡に近い。 小幡は明るくなりつつある空に目をやり、窓を開けた。 風が吹き込む。 貴女は私の娘。 そして、私は貴女の娘・・・。 上りつつある陽に目を細めながら、小幡はゆっくりと言葉を紡ぐ。 「全ての妹たち・・・」 陽光は輝き、闇の空を開けていく。 「・・・全ての娘たちよ」 肩に、確かに彼女を感じる。いつものように穏やかな表情で、その美しい声を響かせて。 冷たい風が髪を遊び、カーテンを軽く吹き上げる。 翠の髪、銀の瞳。パールと草色のスーツを身に纏った、美しい神姫がいた。 プロトタイプ=クラリネット。名をゼリスという。 流れ往く時間の中で。彼女の名はいつしか忘れられ、歴史に埋もれていくだろう。 (消えはしない) 彼女は言ったのだ。『心』がありますと。 世界で始めて、母となる事を選択した神姫。 (消せはしない・・・) 声が重なっていく。 「貴女たちを、愛しています。これまでも、ずっと。これからも・・・」 自分の声と、他ならぬ、優しい『母』の声。 「そして・・・」 重なり、やがて。 あの、懐かしい声が響いた。 『想いと共に。未来を紡ぎなさい』 西暦2036年。1月1日元旦。 全てが忙しなく流れ往き、歴史の波濤が全てを覆い尽くす時代。 そんな中でも時として。 草色の風が舞い、緩やかな『想い』が彼女達の髪を梳き・・・流れる事があった。 第六幕。下幕。 第六間幕
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神姫ちゃんは何歳ですか?第二十八話 天使の舞い降りた夜 書いた人 優柔不断な人(仮) 「おーい香田瀬、悪いけどコレを運んでいってくれ」 商品開発を終え、割と暇な年末を過ごしていると不意に営業の富士田部長からお呼びがかかった 技術部と違って営業部は戦場のような忙しさだった これから年末年始にかけ、各店舗では大規模なセールが行われる 今日日、在庫一掃セールだけでは客は来ないので、新商品や定番商品なども大量に店頭に並べる必要がある その為、我が社としても大量に発生する受注を処理しなければならない 基本的には取引をしてる運送屋に依頼するのだが… 「…全く。なんで伝票を見落とすんだ!…」 どうやら、午後の発送が終わった後に伝票が出てきたらしい 「すいません、白雪関連の伝票だったもので、分けておいたのですが…」 営業の新人が言い訳するも 「置き忘れてどーする!…全く、近くだから良かったものの…」 と一喝される 「まぁ、富士田部長、そのくらいに…彼もまだ慣れてないのですから」 「すまんな香田瀬、そういう訳でコレを『エルゴ』まで運んでいってくれるか?」 と言って俺に小さな箱を渡す富士田部長 「白雪用の補修パーツですね」 「夕方に引き取りに来るそうだ。まだ時間はあるが、道も混んでるだろうし、気を付けてな」 「分かりました、行くぞユキ!」 俺はユキをナビシートに乗せ、車を走らせた ユキのナビゲーションにより(といっても、GSPやVICS等から受けた情報をユキが教えてくれるのだが)比較的すんなりとエルゴに辿り着いた といっても、店の近くは渋滞しており、少し離れたコインパークに車を停めたのだが 「こんにちわー」 「あら、いらっしゃい」 迎えてくれたのはこの店の看板娘のうさ大明神様だ 「誰がうさ大明神ですか」 「心を読まないでくださいよジェニーさん。それより、頼まれてた物を持ってきました」 「それじゃあ、中身を確認しますので、開けていただけますか?」 俺は、ジェニーさんに言われた通りに箱を開ける 「…っと、はい大丈夫です」 ふよふよと浮きながら中身を確認するジェニーさん …いつ見てもシュールだ 「それじゃ、ハンコお願いします」 「わかりました、よいしょっと」 ぽん 伝票の上に着地するジェニーさん 再び浮くと、そこに判が押されていた 「確かに。有り難うございました」 「こちらこそ、急な発注でごめんなさいね」 「それにしても混んでますね」 さすがにシーズンなだけあって、店内は混雑していた 人も、神姫をクリスマスという事で楽しい気分になっているようだった ささやかながらも装飾された店内が、その気分を一層盛り上げてるようでもあった 「そうなのよ。売り上げも好調で、在庫が足りなくなってきそうだから、他にも色々追加で発注したのよ」 「日暮さんも無事に新年を迎えられそうですね」 元々ジェニーさんと二人でやっていたこの店も、いつのまにか自称オーナーの高階さんと彼女の神姫のオウカちゃんが増えて賑やかになっていた 「すごい賑やかになりそうですが…」 困った口調とは裏腹に、嬉しそうな顔のジェニーさん 「楽しそうですね」 「あら?香田瀬さんも大変じゃない?」 「そうですね」 「そっちも楽しそうじゃない?」 「そうですね。楽しみです」 等と話してると 「ジェニーは~ん、何時までもサボってないで、はよレジ打ちに戻ってや~」 「すいませんジェニーさん、引き留めちゃって」 「いえ、いいんですよ」 「それじゃあ俺はこれで。ユキ、帰るぞ」 俺は店内のスペースで他の神姫達と話していたユキを呼び寄せた 「あ、はーい。それじゃ、またね」 ユキが神姫達に別れを告げた後、俺達は店を出た 「うわ、変わってねぇ…」 あいかわらず駐車場は満杯、外の道も渋滞が発生していた 「離れた所に停めてよかったね…」 「そうだな…」 うっかり店の前まで来てたら出られなくなるトコだった 見れば遠くに運送屋の人も見える 俺達のように離れた所に停めて荷物を店まで運ぶようだが… 「重そうだね」 神姫のパーツだけだった俺達と違い、彼らが持っているのは大きなダンボール箱であった 箱にはラインバレル・ロボティクス社のロゴが入ってる 「神姫のフルセットか」 俺達は狭い車の隙間を歩いてくる運送屋をやり過ごす為、その場で待っていた しかし ブロォ~ン! 脇道から、一台のスクーターが飛び出してきた 「うわっ!」 ダンボールで死角となり脇道が見えなかったのか、運送屋が気づくのが遅れた 「やべっ!」 慌ててブレーキレバーを握り、急停止をするスクーター キキーッ さらに車体を倒し避ける ドスン ギリギリ当たらなかったものの、驚いた運送屋は倒れてしまった。そして… ガン! 持っていたダンボール箱がガードレールへと当たる バラッ ダンボールが破れ、中に入っていた黄緑と朱色の箱が飛び出し、イルミネーションが施されている民家の塀に当たる グサッ! 箱は二つ共、もっとも薄いウインドウ部分にプラスティックの星が当たる バチィッ! 電飾がショートし、切れる プスプスと音を立て、焦げた臭いを立てる二つの箱 「なんや?何があった…」 「来ちゃダメだ凛奈さん!」 物音を聞き店の外を窺おうと出てきた凛奈さんに俺は叫んだ 彼女にはこの光景を見せたくなかったからだ いや、神姫には見せたくなかった 出来るならユキにも見て欲しくなかった 何故なら 神姫が産声を上げることなく『死んだ』瞬間だったからだ 「すいません、ウチの方で弁償しますので…」 ペコペコと頭を下げる運送屋 結局あのままスクーターは逃げてしまい、運送屋は日暮さんに平謝り 目の前には焦げた箱が二つ並んでいる 金銭面の問題はカタがつく。運送屋もこういう時のために保険に入ってるのだから しかし、心情面での問題は… 『もし、こんな事にならなければ、どんなオーナーの元へと行ったのだろうか?』 ふとそんな事を考え、彼女達を見る 外装スキンの一部は溶け、内部骨格まで見ている ティグリースの方は右腕が、ウィトゥルースの方は両足が砕け、痛々しい 頭の方はこんなに綺麗なのに… ふと、技術者としての俺がこう考える 『まだ、直せる』 「ねぇ…お兄ちゃん…」 ユキの声に我に返る 「…なんだ?」 「この子達、直せないのかな?」 ユキも同じ事を考えていたようだ そんな俺達の会話に運送屋が割って入る 「直すって言ってくれるのは嬉しいですが、傷物になっちゃ売り物にはなりませんから…」 「いや、そういう事じゃ無いんだ」 「へ?」 俺の返事に戸惑う運送屋 「日暮さん、この子達を俺に売ってくれ」 「センパイ!こっちです!」 日暮さんを説得し、二人を引き取った俺は大急ぎで会社へと戻った 商売人として壊れた神姫を売ることに難色を示していた日暮さんだったが、思いは俺と同じなのか最後には応じてくれた ちなみに原価で譲ってくれると言ってくれたが、丁重にお断りして定価で売って貰った。安く譲って貰うと、彼女達がまるでジャンク扱いでもされるようだったからだ 勿論、日暮さんにそんな意図はないのだが 戻る途中、ユキに皐月へ連絡して貰い、緊急手術の準備をして貰っていた 「皐月、準備は出来てるか?」 「勿論です。ラインバレル・ロボティクス社の方からもデータが届いてます!」 一見無事に見える頭部だが、電気ショックを受けた為、データが飛んでしまっている可能性が高い。したがって、失われてしまったデータを再入力する必要があった 本来、神姫の根幹プログラムのデータは非公開である にもかかわらずこうして寄越してくれるのは、水那岐部長のおかげだろう 「本体の…方も…準備…出来て…ます…」 そう言って水那岐が二つの箱を差し出す 中に入ってるのは、来春発売予定の新型素体『タブリス』だ 『自由意志の天使』の名が付けられたこの素体は、先頃発売されたMMS2ndをベースに、白雪で培った技術を投入し、さらに武装神姫規格のパーツをそのまま使う事が出来るように改良された物である スペック的には通常素体と白雪LMとの間くらいだが、価格は2神姫程にまで下げる事が出来た 「まずは、損傷箇所のチェックからだ」 俺は二人をスキャン装置へとセットする 少しの時間の後、二人のダメージ状況が表示される …やはり状況は真っ赤だ 砕けた手や足は勿論、電撃に晒された本体も内部に大きなダメージを受けていた 「…でも…CSC関連は…なんとか…無事です…コアユニットは…内部に…物理的な…損傷は…ありません…」 しかし、さすがに中枢部は幾重にも保護が為されており、中枢部のダメージは無いとは言わないが思った以上に軽微だった さらにコアユニットに至っては、素体換装をする人もいるため、クレイドルでセットアップを始めるまでは仮止めのみで接続自体されていないのだ 「起動してなかった事が幸いしてますね」 起動していなかった為、過剰な電流が流れずに物理的な被害が最小限に押さえられたようだ もっとも、起動していればこんな事にはならなかったのだが 「これなら、修理すれば問題は無い。あとは頭部の方だな…」 俺は頭部を取り外し、模擬体へと接続する これは本来、初期不良が無いかをチェックする為の物である。コアユニットを作っていないウチの会社だが、白雪のセットアップで神姫を組み立てる場合も多い その場合には、各社からコアユニットとCSC中枢部、武装一式を直接取り寄せて組立て、お客様に発送するのである 「さて、内部のエラーチェックはっと…」 『感情プログラム・エラー、言語プログラム・エラー、バトルサポートAI・8,12,32エラー…』 「さすがに、半分が飛んでるか…」 消えたデータを修復すべく、送られてきたデータを入れようとディスクを探してると… 「あのねお兄ちゃん、ちょっと提案があるんだけど…」 ユキが俺に話しかけてきた 「ん?どうしたユキ?」 「あのね、その壊れちゃったデータ、私から直しちゃダメかな?」 「私からって…自分のデータをコピーして入れるってのか?まぁ出来なくは無いが…」 「ううん、そうじゃなくて、私が直すの。二人の中に入って、教えてくるの」 「…つまり、二人とユキを接続して、デバックしてくるって事か?さすがに無茶だ!一人で二人分のデバックをするなんて!」 ユキの無茶な提案を俺は止めた ユキの体は高性能な白雪のテストモデルだが、コアユニットそのものは普通の物だ。そんな高負荷かけたらどうなるか分かったモンじゃない 「一人じゃなくて、みんなでやればいいのだ」 声に振り返れば、4人の小さな人影があった ミチル、ムツキちゃん、花乃ちゃんにひじりんであった 「あ、あの…健志郎さん、私も頑張りますから」 「私はまだ他人のデバックが出来る程の経験はありませんが、みなさんをバックアップ致します」 「ひじりんも、みんなのお手伝いをするよー」 「ケンシロウ、ここで皆の申し出を袖にしては男が廃るぞよ?」 「みんな…思いは…一緒です…」 「そうですよセンパイ。みんなでこの子達を助けましょ!」 「みんな…有り難う…よし、必ず助けるぞ!」 『おー!』 と言う訳で、コアユニットのプログラム修復はユキ達神姫組が、素体の修復は俺達が行う事にした CSC中枢部の移植は俺が、それ以外の所は観奈ちゃんが行い、それを水那岐と皐月がサポートする 神姫組は模擬体とユキ、ミチル、ムツキちゃんを接続し、外から花乃ちゃんとひじりんがモニターをする 「よし、出来た。ティグリースの方の仕上げを頼むぞ」 「…センパイ、その呼び方辞めません?」 「…は?」 「名前ですよ名前!ちゃんと付けてあげないと!」 「…そうだな。実は考えてあったんだが、セットアップ時じゃ無いとマズイかなって」 「別に…セット…アップ時…じゃなくても…いいんですよ…」 「そうじゃな、ここはやはり、ちゃんとした名前で呼びたいものじゃ」 う…なんか非難されてる俺? 「えーコホン。ティグリースは『ティール』、ウィトゥルースは『ファロン』だ」 「ティールちゃんに」 「…ファロンちゃん…」 「可愛い名前なのじゃ。花乃、火蒔里、ミチル達に教えてやるのじゃ」 「分かりました」 「りょーかいっ!」 「…なんで今?いや別に良いんだが、ユキ達も大変じゃないか?」 「デバックする時には、相手の名前を呼んで上げた方が落ち着くのですよ」 「まぁコレは神姫特有のものだから、ケンちゃんは気にしなくていいよ」 「うーむ、そういう物なのか…っと、ファロンの方も出来たぞ」 「センパイ、早いですよ~」 「まぁこっちも頼む。俺はもう一つやらないといけない事があるんでな」 「もう一つって?」 「コレさ」 と言って俺は作業台の上に壊れたパーツを並べる 「コレって、二人の武装?」 「その通り。真鬼王も直してあげないとな。コッチはデータが飛んでても、神姫から写す訳にはいかないし。ついでに強化もしておこうと思ってな」 「ふえ~、見てる間に分解されていく…さすがセンパイ」 「皐月殿!こっちを忘れては困るのじゃ」 「あっ!ゴメンゴメン…」 こうして、体の方の修理は順調に進んでいった 闇 そこにはただ何もない空間が広がっていた いや、二つの光る物が寄り添っていた 一つは右腕を失った人影。もう一つは両足を失った人影 泣きそうな表情で辺りを窺っている そんな二人に三つの光が近づいた 「あう…」 「もう大丈夫だよ」 光の一つが話しかけてきた その光は人の形へとなった ユキであった 「そっか…話すことが出来ないのだったのだ」 もう一つはミチルに 「でも、私たちが教えてあげます…色々な事を…」 最後の光はムツキへと 「さあ、おいで。ティールちゃん、ファロンちゃん」 二人に手を伸ばすユキ 「え…あ…う…」 「そう。あなた達の名前」 右腕の無い方に向かって 「貴方がティールちゃん」 足の無い方に向かって 「貴方がファロンちゃん」 二人は差し伸べられた手をしっかりと握り 「えう…ちーる…?」 「…はろん…?」 答えてくれた 「これから二人に、色々なことを教えてあげるのだ」 「だから。もうちょっとだけ頑張りましょ」 三人の呼びかけに、二人は顔を見合わせた後 「「…うん!」」 力強く、満面の笑みを浮かべて答えてくれた それと同時に、暗闇に一つの光が現れ、辺りを強烈に照らし始めた 「うーっ、大丈夫かなぁ…」 夜、二人の修理は無事終わり、あとはセットアップをするだけとなった 「センパイ、落ち着いてください」 「…そう…ですよ…診断も…異常なし…なのです…から…」 「そうだな、よし!起動するぞ…」 キーボードを叩き、起動プログラムを実行する 最後に本体の診断プログラムが作動し、チェックを行う 『各部問題無し。これより、セットアップを実行します。貴方がオーナーですか』 「ああ、俺が君たちのオーナーだ。名前は香田瀬健四郎」 『了解しました。それで、オーナーの事は…』 ホっと一安心 「パパと呼ばせて戴きます」 「親父と呼ばせて戴きます」 …はい? 「ちょっと待て!ここは「何とお呼びすれば宜しいのですか?」じゃないのか!?」 そんな俺の言うことは無視して目を閉じる二人 そして再び開いたとき、生気の籠もった目で俺を見つめ 「この度、私をお買いあげ戴き有り難う御座います、私は寅型MMSのティールと申します。これからよろしくお願い致します」 「よっ!あたいを買ってくれてサンキュ!あたいは丑…まぁ見りゃ分かるか。名前はファロンってんだ。ヨロシクな!」 ぽかーん 呆気にとられる一同 「…おかしいですね、デバック時に名前で呼んでも、セットアップ時には忘れているはずなのですが…?」 どうにか正気に戻った花乃ちゃんが言った 「なんで、名前知ってるんだ…?」 「え…そういえば、まだ名前付けて戴いてませんでしたよね…?」 自分の発言に驚くティール 「まぁいいじゃん、細かい事は。んじゃ変える?」 笑いながら答えるファロン 「いや、その名前で良いんだが…」 「ほっ…良かったです。なんかこの名前、とても大切な気がしたので」 「だな。あーは言ったが、実際変えるって言われたらどうしようかと思ったよ」 「大切?」 「ええ。とっても大切な名前です。私たち、夢を見てのです」 「夢?」 不思議に思って訪ねてみる 「…突然まばゆい光に包まれたかと思ったら、深い闇に飲まれそうになって、手をのばそうと思ったら右手が無くて、隣でもがいてるファロンも両足が無くて、だんだん意識が遠のいていったのです」 これってまさか… 「そしたらさ、あたい達を闇から救ってくれたおっきな手があったんだ。とても大きくて、とても暖かい手が」 「その後に現れた光が、私達に名前をつけてくれたのです…そんな夢」 この子達…覚えてるのか? 起動して無くても、自分の身に起こった事を… 俺は二人にそっと手を添え、こう言った 「これからヨロシクな」 「はい…この手…暖かい…」 「ああ…この手だ。あたい達を助けてくれたのは…」 俺は泣いていた いや、みんな泣いていた よかった… この子達を助けられてよかった…
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第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 第9話 「嵐兎」 グワワアーン!! 廃墟ステージで大爆発が起きる。 砂地で砲撃を行っていたスーザンがびくりと振り向く。 スーザン「なっ・・・なんだ今のは?」 スーザンの砲撃から身を隠していたミシェルとヴァリアも驚いて廃墟ステージを見る。 ヴァリア「クソッタレ!一体どうなってんだ!」 戦乙女型MMSの「オードリ」がミシェルに近づく。 オードリ「ミシェル、チームの半分はあの動けなくなった戦艦型神姫に撃破されてしまいましたよ」 ミーヤ「こりゃダメだよ」 戦車型のヴァリアが腕を組んで必死に考える。 ヴァリア「うーんうーん・・・どうしよう?」 そのとき、1機の黒い天使型神姫と飛鳥型の神姫がヴァリアたちの隠れている岩陰に飛び込んできた。 アオイ「調子はどうだい?」 エーベル「うは、酷いなこりゃ、そこらじゅう神姫の残骸だらけだ」 ミシェル「あんたらは護衛機の相手をしていたんじゃ?」 アオイ「数機、ぶち落として加勢に来たぜ」 エーベル「今、残っているチームの残存神姫は何機だ?」 ヴァリアが手を上げる。 チーム名「城東火力特化MMSギルド」 □戦車型MMS「ヴァリア」 Sクラス オーナー名「松本 弘」 ♂ 25歳 職業 ベアリング工場員 □ウシ型MMS「キャナ」 Aクラス オーナー名「木村 雄一」 ♂ 25歳 職業 システムエンジニア □ケンタウルス型MMS「コルコット」 Aクラス オーナー名「三浦 晴香」 ♀ 17歳 職業 高校生 □ヤマネコ型MMS「ミーヤ」 Cクラス オーナー名「河野 恵」 ♀ 17歳 職業 高校生 ヴァリア「こっちは4体しか残っていない、武装も投棄しちまってろくな武装がない。 ミシェルもお手上げのポーズをする。 チーム名 「定期便撃沈チーム」 □ヘルハウンド型MMS 「バトラ」 Bクラス オーナー名「合田 和仁」♂ 15歳 職業 高校生 □戦乙女型MMS 「オードリ」 Sクラス 二つ名 「聖白騎士」 オーナー名「斉藤 創」♂ 15歳 職業 高校生 □サンタ型MMS 「エリザ」 Bクラス オーナー名「橋本 真由」♀ 17歳 職業 高校生 □マニューバトライク型MMS 「ミシェル」 Sクラス 二つ名 「パワーアーム」 オーナー名「内野 千春」♀ 21歳 職業 大学生 □天使コマンド型MMS 「ミオン」 Bクラス オーナー名「秋山 紀子」♀ 16歳 職業 高校生 □フェレット型MMS 「スズカ」 Bクラス オーナー名「秋山 浩太」♂ 19歳 職業 専門学校生 □ウサギ型MMS 「アティス」 Sクラス 二つ名 「シュペルラビット」 オーナー名「野中 一平」♂ 20歳 職業 大学生 □蝶型MMS 「パンナ」 Bクラス オーナー名「田中 健介」♂ 19歳 職業 高校生 □剣士型MMS 「ルナ」 Aクラス オーナー名「吉田 重行」♂ 28歳 職業 電気整備師 □ハイスピードトライク型 「アキミス」 Bクラス オーナー名「狭山 健太」♂ 19歳 職業 大学生 ミシェル「こっちも似たようなものですわ、半分以上の神姫は生き残ってますけど、戦意を喪失して、実質戦えるのは数体ってところかしら?」 チーム名「1111111」 □黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス オーナー名「斉藤 由梨」 ♀ 22歳 職業 商社OL □戦闘機型MMS 「アオイ」 Aクラス オーナー名「立花 一樹」♂ 24歳 職業 事務機営業マン アオイ「たかが、一隻の死にぞこないの戦艦型神姫にキリキリマイとはな」 アキミス「結局、生き残ってるのは、臆病な腰抜け神姫と要領のいいベテラン神姫だけってところだ!!」 コルコット「なんやと!!」 ミーヤ「うるさいな」 アティス「喧嘩するな!!まずはあの戦艦型神姫をどうするか考えないと・・・」 エーベル「誰か指揮を取ってくれ!Sクラスのベテランがいいな」 ヴァリア「俺はいやだよ」 オードリ「私もいやですよ」 ミシェル「・・・・私が取ろうか?」 アティス「頼む」 エーベル「決まりだな」 アオイ「ベテランのAクラス以上の神姫だけで、一斉攻撃だ」 エーベル「うん?」 アオイが砂地に簡単な絵を描く アオイ「いいか、ここが俺たちがこそこそ、隠れている岩だ、この岩の20メートル先に戦艦型神姫が構えている」 ミシェル「戦艦型神姫は被弾していて動けない。だが、奴の砲座とレーダーもろもろはばっちり生きている」 アティス「動けなくなっただけで、戦闘能力は下がってへんな」 オードリ「・・・・接近して攻撃が一番、有効ですが、あの強烈な主砲と対空砲とミサイルをなんとかしないと・・・」 ヴァリア「せやけど、敵は優秀なレーダーとマスターの指揮管制で撃ってくる。レーダーをなんとかしなと・・・どうにもならないぞ」 アオイ「奴のレーダーを30秒だけ妨害できる手があるんだけど?」 エーベル「?なんだ?ECMか?」 ルナ「そんな高級な電子装備持っている神姫おるかいな」 アオイ「古い100年も前の手だが・・・これだ」 アオイは岩の影にあるゴミ袋に煙草のアルミホイルの包装を指差す。 エーベル「アルミホイル?ああ・・・そういうことか」 エーベルはにやりと笑う。 アティスも気が付く。 アティス「クレイジー!!正気じゃないわー」 オードリ「アルミホイル?なんに使うのですか?」 アオイ「こうつかうんだよ!!」 アオイはばっと岩陰から踊り出ると、煙草のアルミホイルの包装を掴んで、スーザンに向かって飛んだ。 スーザン「!!!敵神姫接近!!」 西野「ええい、しつこい連中だ!!まだ攻撃してくるか!!」 岩陰から数十体の武装神姫がどっと飛び出してくる。 ミシェル「突撃!!突っ込むんだ!!」 アティス「ええい、ままよ!!」 オードリ「やああああああああ!!」 西野「撃て!!叩き潰せ!!スーザン!!」 スーザン「了解!!」 スーザンはレーダー照準でアオイたちに合わせるが・・・ アオイはリアパーツのプロペラにアルミホイルの包装を投げつけた。 高速回転するプロペラによってアルミホイルの包装がコマ斬れになって、空に舞う。 ビーーーーーーー!!! スーザンの射撃レーダーが無数に飛び散ったアルミホイルの包装に反応し、真っ白に堕ちる。 スーザン「うわああ!!!な、なんだこりゃあ!!!レーダーロスト!!目標をロックできない!!」 西野「しまった!!チャフだ!!アルミ箔を散布してレーダーを撹乱しやがったな!!」 バンっと筐体を叩く西野。 ラジオにアルミホイルをまくと聞こえなくなる原理をご存知だろうか? 電波は電場(空間に電気の力がおよんでいる状態)と磁場が変動しながら空間を伝わっていく波。金属は電場で揺り動かされやすい状態の電子を多数含んでいて,金属にあたった電波の電場変動はこの電子を揺さぶることに消費される。電波はラジオのアンテナまで「電波」として届かなくなる。 一般に「チャフ」と呼ばれるシステムは、電波は金属によって反射されてしまう原理であり。 電波誘導装置のジャミングに使われるのもアルミ箔を細かく刻んだもの。 アオイは煙草の内装のアルミホイルを利用して即席のチャフ、ウインドウを作ったのだ。 遠距離からレーダーを使って射撃を行うスーザンは、アルミ箔の妨害によって正確な位置と砲撃がまったくできなくなっていた。 西野「ええい!!ソナーだ!!音響探知!!それで割り出して攻撃し・・・」 ミシェルが蝶型神姫のパンナを肩を叩く。 ミシェル「パンナ!!歌って!!!」 パンナをすうーーと息を深く吸うとマイクの出力を大音量に上げて歌った。 パンナ「私の歌を聞けェ♪」 パンナの歌声は、スーザンのソナー探知を狂わせる。 スーザン「!???!?!?!」 西野「どうしたスーザン!!」 スーザン「う・・・歌が・・・聞こえる・・・」 アオイとエーベルが低空飛行で急接近する。 それに続くオードリとミシェル、アティス、アキミス、ルナ 後方ではヴァリアが拳銃を片手に支援射撃を加える。 ヴァリア「撃て!!支援するんだ!!」 コルコット「了解ッー」 ミーヤ「撃破された神姫の武装を使うとは考えましたね」 キャナ「ごちゃごちゃ言わずに撃つ!!」 ヴァリアたちは周りで撃破された神姫の残骸から使えそうな武装を拝借してバカスカ撃ちまくる。 スーザン「ダメだァ!!!レーダー、センサー共にジャミングされて使えねえ!!!」 西野はダンと筐体を叩く。 西野「ならば、光学目測射撃だ、レーザー照準で攻撃しろ!!三角法射撃用意!!あの岩とあの松の木、それから大阪城の天守閣を目標にして三角法にて側距、敵機の位置を割り出して砲撃しろ!」 スーザン「クソッタレ!!アナログかよ・・・」 キューーインンイン・・・シャカシャカ・・・ 演算処理を0.5秒で済ませるスーザン。 スーザンは目を蒼く光らせて、じっと攻撃してくる神姫たちを見つめ、砲撃の準備をする。 ときたま、近くにヴァリアたちが放った砲弾が着弾し爆風と破片が降ってくるが気にしない。 西野「弾着観測は俺がする!!戦闘砲撃用意右80度交互撃ち方、初限入力2335砲撃開始、方向測定はじめ」 スーザン「右ヨシ左ヨシ、敵機距離23160・・・」 西野がマイクを掴んで叫ぶ 西野「撃ち方はじめッ!!!!!!」 ズドンズドンズドンズドンズドンズドンッズドンズッドオン!! To be continued・・・・・・・・ 前に戻る>・第8話 「爆兎」 次に進む>・第10話 「射兎」 トップページに戻る
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鋼の心 ~Eisen Herz~ 登場神姫の武装紹介 ~その他編~ 焔星(エンシー) 【壱式=炎(ホノオ)】 焔星の基本形態。 強力無比な【プロトン砲】を主兵装に、【レーザーブレード】や【シールドファング】、【オートガン】等で武装している。 基本的には回避主体の軽量級神姫だが、プロトン砲の火力は凄まじく攻撃力は極めて高い。 二機の【ぷちマスィーンズ】である【光阴(コウイン)】、【闇阳(アンヤン)】との連携を駆使する事で、ステータス以上の戦闘力をも発揮できる。 ただし、【光阴】、【闇阳】は、高い性能の代償として稼働時間が短い為、こまめな補給を行う必要があるが、その際の補給は、本体との接触により電力の譲渡と言う形で行われる。 その電力を生み出す為の大型ジェネレータをバックユニットに内蔵している上、プロトン砲とシールドの重みも加わり、機動性を維持する為に装甲の大部分をオミットする必要があった。 大型ジェネレータは、【ぷち】への補給以外にもプロトン砲のエネルギー源としても利用される。 【式神弐式=光阴(コウイン)】 浮遊移動を駆使する近接防御型の自律兵器。 上半身のみという特異な形態ながら、非常に高い装甲防御力と切断力の高い大鎌【デスサイズ】を有し、近接格闘戦で相手を追い詰める。 作中では使用していないが、飛び道具として双発式の【小型イオン砲】を装備している。 腕と頭部を本体内部に収納する事で球状の防御形態へ変形し、更に守備力を向上させることも可能。 高性能かつ多彩な装備を有するものの、そのエネルギー源は小型のバッテリー一つでまかなわれている為、こまめな補給が欠かせない。 【式神参式=闇阳(アンヤン)】 四足による安定性を活かした精密砲撃を駆使する砲撃支援型の自律兵器。 ある程度の連射力と威力を両立させた速射砲二門を主兵装とし、後方から焔星本体や【光阴(コウイン)】を援護する。 更に、変形する事で高速飛行も可能であり、砲撃の最適ポイントへと素早く移動することが可能。 また、飛行モード時に焔星本体を上に載せ、ボードアタックを敢行する事も出来、用途は多岐にわたる。 エネルギーの消耗が【光阴】ほど激しくないので頻度は多少落ちるものの、補給が必要なのはこちらも同じ。 【真鬼王=零】 焔星の高速戦闘形態。 従来型の【真鬼王】とは真逆に、速度と機動性を向上させる事を目的とした形態であり、焔星本体が、【光阴(コウイン)】、【闇阳(アンヤン)】と合体する事で形成される。 両ぷちとの合体により、それぞれのコンデンサを活用することが出来るようになるため、主兵装の【プロトン砲】もリロード時間が短縮され、発射間隔が短くなる。 また、【デスサイズ】、【レーザーブレード】、【オートガン】等も使用可能で、攻撃面に隙は無い。 巨大な割に装甲防御は然程高くも無いが、強化される機動性で攻撃を回避する事が出来る為、生存性は高い。 なお、【零】の高速戦闘能力は、機体に直結される二機の【ぷち】が焔星本体のAIとCSCを補助することで実現している。 【プロトン砲】 非常に高い威力を持つエネルギー砲。 榴弾砲と同様に、着弾地点で爆発を起こす性質があり、回避するのが困難な武器。 その威力、攻撃特性の代償として重量とリロード時間と言う枷を持つ。 【零】形態では【ぷち】用のバッテリーを流用する事で、リロード時間の大幅な向上を得ている。 【シールドファング】 【炎】形態時に盾となる部分を展開し、大顎として敵に食いつかせる武器。 奇襲性が高く、飛行タイプなどの脆弱な装甲ならば食い破る威力も持つが、重装甲タイプの神姫には歯が立たない。 本来は噛み付く事で動きを止め、【ぷち】でトドメを指す為の補助的な武器。 【デスサイズ】 単分子カッターを内蔵した長柄武器。 作中では使用していないが、大鎌、薙刀、長斧の三形態を使い分けられる。 切断力は凄まじいものの、少々重く扱いづらい面もある。 実は市販されている典雅の製品の一つ。 【レーザーブレード】 アーンヴァルのレーザーブレードを出力強化したもの。 威力はノーマルタイプに比べて向上しているが、稼働時間で劣り、充電に必要な時間も長い。 もちろん、威力が高いといってもカトレアはおろか、フランカーのものよりも出力は劣る。 ただし、通常の神姫相手に格闘武器として用いるならば、充分に強力な性能。 【オートガン】 【炎】、【零】、どちらでも使用できる小型火器。 通常のハンドガンとして手に持って使用する事も可能だが、脚部にマウントしたまま自動的に稼動し、発砲する事もできる。 威力は無改造のハンドガンと同じでしかないが、自衛火器としては有用であり、近接防御に一役買っている。 歌憐(カレン) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (karen001.jpg) 【重装潜水装備(メキアリル)】 目立たないものの、実はかなりの実力者である藤堂晴香の神姫。イーアネイラ型。 重装潜水装備となる【メキアリル】ではサポートマシンである【アイオール】をそのままバックユニットとして装備し、水中での機動力と攻撃力を強化している。 カレン最大の特徴は、主兵装である【オルフェウス】がギタータイプに改造されている事で、音響兵器としての性能向上に加え、そのまま近接武器としても使用可能。 特別に【エレメンタルソング】と銘を与えられているこの【オルフェウス】は、弦を爪弾く事でエッジ部分が共振を起こし、刺突のダメージを格段に向上させられる。 近接戦では、相手に突き刺したまま『演奏』する事で相手の内部(電子機器)に直接攻撃できる。 要するに轟鬼の『雷電激震』 背面ユニットで目立つ二器のサーペントは、【エレメンタルソング】に砲身を共振させる事でその効果を増幅するアンプの役目も持つ。 もちろん直接メーザー砲としても使用可能で、各種魚雷やニードルガンなどと合わせ、カレンの絶大な水中戦闘能力を支えている。 水中戦に限れば作中最強で、フブキにすら抗し得る神姫。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (karen002.jpg) 【軽装陸戦装備(メルリンク)】&【自立型随伴砲台(アイオール)】 9話で使用した軽装の陸戦装備。 本来肩装備のニードルガンを合体させ、ツインランサーにしているが武器はこれと【オルフェウス】だけ。 余談だが【エレメンタルソング】が開発されたのは大会直前なので、9話の時点では武器は普通の【オルフェウス】だった。 サポートメカである【アイオール】は、水中行動しか出来ないという制約はあるものの、水中戦では単独でも陸戦型の神姫を倒しうるほどに強力。 高い移動速度と圧倒的な火力を武器に、水中戦を制するだけでなく、VLS(垂直発射ミサイル)で陸上への支援攻撃も行える。 カレンの18番である【霧】も【アイオール】本体、及び発射されるミサイルから散布する。 天使型MMSブラック・アーンヴァル 試作開発段階のプロトタイプアーンヴァルをコピーした擬似神姫=マリオネット。 正確には神姫でもMMSでもないロボット。 旧海底資源掘削プラントで行われた戦闘(バトル)においてフブキ側の手勢として数千機が投入された。 CSCを搭載しておらず、本体内蔵のAIが司令塔からの大まかな指示で行動する方式。 もちろん性能は通常の神姫は及ばず、数で攻める物量戦でその真価を発揮する。 件の旧プラント攻防戦においては数種類のブラックタイプが確認されており、それぞれに用途が異なる。 神姫と違い柔軟な判断が出来ない為に最初から役割を分担していた物と推測されるが詳細は不明。 【TYPE/α】(写真上段) LC3レーザーキャノンで武装した空戦砲撃戦タイプ。 小回りは利かないものの、最大速度は最も早く装甲も(比較的)頑丈であった。 反応速度等に難のある擬似神姫だが、武装の威力は通常の神姫と変わらず、特にこの【TYPE/α】は突入側の最大の脅威となっていた。 頭髪はロングであり、レーザーの発熱を放出するヒートシンクの役割を果たしていた。 【TYPE/β】(写真中段) 空中格闘戦(ドッグファイト)に特化した戦闘タイプ。 上記の【TYPE/α】とは比較にならない旋回性能を持ち、射程こそ劣る物の時間当たりの総火力でも勝っていた。 手持ち武装のレールガンは後に市販される物とは違い、本体から電力を供給されている為、手首のジョイントに固定する必要があり運用には多少の難が見られる。 格闘専用のレーザーソードと防御用のシールドを一つづつ持った最もバランスの良いタイプでもある。 頭髪はポニーテールで、利便性と緊急時の放熱性能を秤に架けた結果だと思われるが、マリオネットにその様な判断が出来たのかは不明。 【TYPE/γ】(写真下段) 屋内白兵戦に対応した陸上歩兵タイプ。 装備は最も安価で、施設内に大量に配備されていた機種。 しかし、過半数を占めていた主力部隊は、たった一機の神姫に一瞬で撃破されており運用には問題点が残っていた物と推測される。 火器はアルヴォ系のSMGであり対神姫戦には十分な威力だが、特筆するべきような機構は見受けられない。 屋内での密集戦を想定してか頭髪は短く、過熱の多い武装の使用が出来なかった物と推測される。 尚、この戦いの後回収されたこれらのブラックタイプを参考にFrontLine社が開発した物が、トランシェタイプのアーンヴァルであるとも言われているが、同社から公式の発表は無い為に詳細は不明。 サソリ型MMSアルアクラン 神姫事業の先駆けであるグループK2が開発した試作神姫。 一体の神姫に極限の装甲と火力、それを支えるパワーを持たせたテストベッド機。 商品化する際の価格がストラーフやアーンヴァルに対し3倍ほどに上る為、試作段階で企画が終了している。 後にUnion Steel社が神姫事業に参戦する際、開発資料として譲渡されており同社のティグリース、ウィトゥルースの雛形ともなった。 主な武装は 【荷電粒子ビーム砲】×1 【2連装速射機関砲】×1 【電熱シザーアーム】×2 特筆するべき性能としては斥力場浮遊による滑走能力が上げられるが、これは単体では完成しておらず、バトルフィールドに予め電磁レールとして使用できる磁場発生装置が必要となる。 鋼の心本編の最終決戦場となる、旧資源掘削プラントには重要設備付近にある大部屋にこの電磁レールが予め敷設してあり、一体ずつのアルアクランが配備されている。 また、その電磁レールを利用し、主砲である【荷電粒子ビーム砲】を発射後に湾曲させる能力もあるが、滑走機能同様にレールの敷設された室内以外では使用できない。 余談だが、基本的に試作タイプの情報は他社に公開されない為、後にMagic Market社がサソリ型MMS(グラフィオス)を作成したのは単なる偶然である……。 清姫(キヨヒメ) 数多の重火器で武装し、強固な電磁装甲で身を守る巨大な神姫。 乱戦においては最強とも言われており、天海におけるランクは2。 火力の高さは言うまでも無いが、格闘能力、機動力も決して低くは無い。 非常に有名な神姫ではあるが、その実態は謎に包まれており、オーナーの正体すら定かでは無い。 一部では、イリーガルであるとも噂される。 幾度かバージョンアップを受けているが、現在(大会時)の搭載火器は以下の通り。 【3.5mm滑空砲】 主砲となる、インターメラル製の超大型滑空砲。 火力は凄まじく、直撃を受ければ如何なる神姫とてひとたまりも無いと言う、文字通りに必殺の火器。 重量がある為に取り回しが難しく、近距離では照準をつけるのは困難だが、破壊力はそれを補って尚余りある。 【1.2mm滑空砲】 副砲は【FB256 1.2mm滑空砲】と同様のもの。 腕部に内蔵されており、非常に広い射角と操作性を持つ。 威力では【3.5mm滑空砲】に劣るものの、近接戦でも使用可能である為に使用頻度は高い。 【1.0mm狙撃砲】 超長距離での主力となるロングバレルキャノン。 他の砲と同じく行進間射撃も可能だが、静止状態における精度が極めて高く、大口径の狙撃銃としても機能する。 ある程度の連射も可能で強力な弾幕を展開し、対空射撃を行う事も可能。 【0.8mm速射砲】 連射性に特化した小口径滑空砲。 清姫の弾幕の真髄とも言える火器であり、これと【ガトリングガン】の併用は極めて強力。 弾種は近接/時限信管の【榴弾】であり、対空高射砲としても機能する。 【ガトリングガン】 小口径の銃弾を極めて速い速度で連射する機関砲。 清姫の火器としては比較的小型だが、通常の神姫であれば主兵装であっても過剰とも言える程の火力である。 【6連短距離ミサイル】 左右連動で、合計6発の誘導ミサイルを発射するミサイルポッド。 短距離と銘打たれているが、通常の神姫の射程距離よりも遠くまで攻撃可能。 誘導性が極めて高く、飛行型、高機動型の神姫にとっては致命打となる。 【2連長距離ミサイル】 理論上フィールドの端から端まで届く長射程の巡航ミサイル。 威力は【3.5mm滑空砲】にも匹敵する程であり、極めて強力。 装弾数が少なめなのが弱点。 【レールガン】 電磁加速された小口径高速弾を発射する武器。 装甲貫通性が極めて高く、ジュビジーの【キュベレーアフェクション】ですら貫通する。 破壊力そのものは【榴弾】に比してやや劣る。 【スプレッドランチャー】 散弾のように拡散する【榴弾】を発射するランチャー。 比較的射程距離は短いものの、面制圧火器であり、広範囲を一瞬でなぎ払う。 更に連射も可能であり、主砲とは別の意味で凶悪な武装。 【小型機銃】 至近距離や小型目標への射撃に使用するバルカン砲。 補助的な兵装であり、威力も普通の神姫の副砲並で極立った特長は無い。 【Sマイン】 爆発し、周囲に散弾をばら撒く近距離用特殊兵装。 無差別攻撃であるため、清姫自身も攻撃を受けるが、散弾の威力は清姫の装甲で弾く事が可能である為、敵だけが被害を蒙る。 これを防ぐような重装甲の敵はそもそも至近距離まで近寄れない為、低い威力に問題は無い。 リーヴェレータ(リーヴェ) 飛行型かつ、重量級という極めて特異な神姫。 飛行速度は極めて遅く、他の飛行型はもちろん、平地であればトライクやティグリース、果てはハウリンにすら移動力で劣る事もある。 ただし、装甲はストラーフをも凌ぎ、攻撃力は極めて凶悪。 また、移動力の低さも地形の利用(悪路へ追い込む)や高度を下げながら飛行する事で加速を行い、補うことが可能。 空対空戦には向いていないが、バトルロイヤルの特性上飛行タイプは遭遇率が低く、リーヴェの装甲を貫けるだけの重火器を有さない事が殆どなので、結果として生存性は極めて高い。 主な兵装は機体下部の大型連装機銃と各種爆弾。 爆弾は【無誘導爆弾】【レーザー誘導爆弾】【燃料気化爆弾】【クラスター爆弾】【テルミットナパーム弾】等を多数有しており、彼女の真下は如何なる神姫もその生存を許されない地獄と化す。 実は重過ぎる重量をフロートで浮かして、ターボプロップで移動するという飛行船のような移動法である。 普段はお淑やかだが、バトル中は性格が豹変する。 それはもう、別人レベルで……。 何か溜まっているのかも知れない。 アーシュラ 【アトラクアナクア】 パワー最優先のチューンナップを施されたストラーフ。 天海市の神姫センターでも上位に位置する神姫の一人で、ランクは6。 最大の特徴は6本装備の【チーグル】であり、近接格闘で右に出る者はいない。 ただし、反応速度を向上させる為、思考能力を極限までカットしてしまう為、戦況判断が不得手。 過去に、「蜘蛛らしく糸を吐く能力」を付与された事があったが、自分で張った蜘蛛の巣を敵と認識し、即座に殴りかかった事がある程におバカ。 当然、正式採用は見送られた。 トリオ・ザ・サーべラス(Cerberus) 三機一組で活動するサーべラスの構成機体。基本的に三機とも装備は同一。 概要としては、ハウリンの標準装備をベースに、カスタムアップされた強化型ハウリン。 主兵装は【吠莱壱式】と【ヒートサーベル】(レーザーブレードではない)。 補助兵装として【拡散ビーム砲】(頭頂部の“耳”部分)を装備している。 ただし、【拡散ビーム砲】は出力不足で目くらまし程度の効果しかない。 機動面では、極小タイプのフローターユニットを内蔵しており、地面の上を滑走移動する事が可能で、通常のハウリンの比ではない高速移動を可能としている。 更に、装甲も充分に頑丈で、ハウリンタイプの特徴である頑強さと相まって高い耐久性を持つ。 しかし、これ程の高性能でありながら何故か戦果が振るわず、天海最弱の3機という不名誉な知名度を持ってしまっている。 三機の連携による、非常に強力な必殺技を持っているらしいが、未だ公開された事はない。 因みにオーナーは黒井三兄弟。 高校3年生の三つ子であるらしい。(黒い三年生!!) また、構成する三人のハウリンは戦闘中の呼称をα、β、γと言う記号で呼称するが、本名は別にあるとか。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る -
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そこは。 意外なほどに広い空間だった。 「……」 部屋の中央には、黒衣の神姫。 忍者装束をモチーフにした装甲衣と背後に広がる漆黒の翼。 「……」 白脱した虚無を思わせる切りそろえられた銀髪。 そして。 「……ようこそ、5年越しの挑戦者達よ」 静かに降り積もる深雪を想起させる涼やかな声。 「土方真紀の武装神姫、フブキ。……だな?」 「ええ」 祐一の問に、静かに頷きフブキは背中の翼を広げた。 「私が、最後の『敵』です」 「……なるほど」 最早、祐一には全てが明白だった。 直に彼女と出会うまでは保留にしておいた問いに、最終的な解答が出る。 「アイゼン」 「……ん」 行くぞ。と、言うまでもない。 祐一のように、この状況を完全に理解した訳ではないだろうが、それでも彼女は彼の判断に疑問を差し挟みはしなかった。 「……」 無言のまま、アイゼンは無骨なザバーカを一歩前へと踏み出す。 「何も聞かないのですね?」 「負けるまで、答える気無いだろ?」 ふふふ。と幽かに笑い、フブキも同じく一歩踏み出す。 「話が早くて助かります」 「……」 フブキと、アイゼンとが、ほぼ同時にそれぞれの武器を構えた。 奇しくも双方、双刀。 アイゼンは何時ものアングルブレードに、大小組み合わせたフルストゥを副腕に持ち、近接戦に備えている。 対するフブキも刀型の剣を両手に一つずつ持ち、明らかに接近戦を意識していた。 「開始の合図は要るか?」 冗談めかして投げかけた祐一の問に、しかしフブキは神妙に頷く。 「お願いしましょう。……それが、貴方がたの流儀でしょうから……」 「……?」 アイゼンの表情に、一瞬だけ戸惑いのような物が生まれ、すぐにそれを押し殺す。 元より、余分な考え事をしながら戦える相手ではない。 「……それじゃあいくぞ。……ゲットレディ」 僅かに屈み、突進に備えるアイゼンとフブキ。 「―――GO!!」 そして、最後の戦いが始まった。 鋼の心 ~Eisen Herz~ 第35話:ネメシス 「―――砕!!」 先手は、当然のようにフブキ。 反応速度も、敏捷性も、移動力も。 凡そ『速さ』と区分できるあらゆる性能が、敵対するアイゼンの比ではない。 両腕を万歳するように掲げ、大上段から二本の刀を同時に振り下ろす。 ≪system“Accelerator”starting up≫ 対するアイゼンは、初手からアクセラレータ。 フランカーから移植された思考加速装置を起動、フブキに追従する反応速度を得る。 AIにかかる負担から、戦闘時間は大幅に短くなるが、コレ無しでは戦闘以前の段階で勝負にならない。 「……っ!!」 性能差の割には必要とする加速度が低い為にアイゼンを苛む頭痛も鈍いが、フブキに対しては、ある程度の事前情報があり、それなりに行動を予測できる為、この程度でなんとか対応範囲に持ち込める。 辛うじて副腕のナイフで双刀を外側に弾き、素体腕で持ったブレードを左右から挟みこむように振るう。 「…疾ッ」 即座にフブキがアイゼンの胸を蹴って離脱。 悪魔型のブレードは空を切る。 直前。 「……行けぇ!!」 そのまま、ブレードが前方に投擲された。 「ほぅ?」 軽く驚きながらも、フブキは双刀で投擲された2本のブレードを弾き飛ばした。 直後。 「む?」 更に、重なるように投擲された刃が4本。 アイゼンが、分解されたフルストゥを両の腕と副腕とで、すかさず射出したのだ。 「初手から武器を全て捨てるか!?」 だが、それぐらい意表をついた攻撃で無ければ、最強の神姫相手に戦いの主導権は握れない。 フブキは一瞬。 ほんの僅かな間だけ判断に迷う。 羽手裏剣での迎撃は、投影面積の薄い刃を打ち落とすには不向き。 かといって避けようにも、アイゼンを蹴り飛ばした直後で宙に浮いている状態では緊急回避は出来ない。 刀で弾こうにも、僅かずつタイミングをずらして投擲された刃は、まるで列車のように同じ軌道を時間差をつけて飛来するため、全弾弾く事は不可能。 ならば。 「防ぐまで!!」 体の前で翼を閉じて構成する分子機械を再配置。 堅牢な殻を形成しそれを盾とする。 ダダダダ、と刃が翼の表面に突き刺さるが、分子機械で多層構造を形成された防壁は貫通をゆるさない。 この時点でようやく、アイゼンを蹴って飛びのいた滞空から着地するフブキ。 刺さったナイフを振り落とす為に勢いよく翼を広げ、開けた視界に。 「……ふっ」 チーグルを振りかぶったアイゼンが居た。 「―――ッ!?」 悪魔型のモチーフに恥じない暴力的な威力の腕(カイナ)が、寸での所で身をかわしたフブキを掠め、空を切る。 極僅かに、爪の先が引っかかった胸部装甲が、しかしその圧倒的な腕力ゆえに大きく裂けた。 (……さすがストラーフ。パワーならば最新鋭の重量級神姫にも引けを取りませんね) 振り抜いたチーグルの勢いは止まらず、アイゼンは大きく姿勢を崩す。 フブキにとっては反撃を行う絶好のチャンスだ。 しかし。 「罠なんでしょう?」 フブキはそれに喰いつくほど浅はかではなかった。 「……ッ」 更に身を引いて間合いを広げたフブキの眼前を、ザバーカによる後ろ回し蹴りが擦過する。 またもやかすり傷を負うが、それを意に介さず、フブキは間合いを広げて仕切り直しを図った。 その選択が、祐一とアイゼンにとっては最も手痛い一手であると、フブキは確かに理解していたのだ。 ◆ 武装神姫を大雑把に両極化すれば、重量級の『パワー型』と軽量級の『高速戦闘型』に分類される。 大きく、重い方がフレームの強度を上げる事ができ、それに伴ってパワーも向上する。 更には自重そのものが、打撃の威力と密接に関わる質量を上げる為、攻撃力は更に向上。 結論から言えば、神姫の重量と腕力はほぼ正比例の関係にあるのだ。 即ち。重いと言う事は強いと言う事だ。 即ちこれこそが重量級神姫のコンセプトに他ならない。 では。 対する軽量級神姫のメリットは何処にあるのだろう? 当然の如く予測されうる答えは『速さ』だろう。 だがしかし。 それでは誤りではない、だけで。正解でもない。 何故ならば、時として『重い方が速い』事もあるからだ。 神姫を例に挙げるなら、アーンヴァルとエウクランテが判りやすい例だろう。 共に飛行タイプの軽量級神姫に分類されるが、実際にはアーンヴァルの方が全備重量はかなり重い。 しかし。最大速度はアーンヴァルの方が圧倒的に速いのだ。 理屈から言えば、エウクランテではアーンヴァルに追いつけない。 ……が、実際の戦場ではむしろエウクランテの方が速さを武器とするのである。 何故か? その答えは『加速力』にある。 仮にエウクランテの最大速度を30、アーンヴァルを50として考えてみよう。 共に最大速度を出している状況では、エウクランテはアーンヴァルに及ばない。 だが、静止状態からの加速勝負なら話は変わる。 アーンヴァルが2秒ごとに10ずつ速度を上げるとしよう。 その場合、最大速度である50に達するのは10秒後。 しかし、エウクランテが10速度を上げるのに要する時間が1秒なら、最大速度である30に達するのは3秒後。 同時にスタートしたのならば、3秒後のアーンヴァルの速度は僅か15、エウクランテの半分に過ぎないのだ。 そして、乱戦中に10秒もの間直進、即ち最大加速をする機会はまず無い。 攻撃のため、回避のため、位置取りのため。 戦闘機動とは急緩が複雑に絡み合う物だからだ。 故に。 軽量級神姫の強みとは、即ち加速力。 如何に短い時間でトップスピードに乗り、そして減速出来るかが性能の優劣を分ける。 そして、それを行う為に最も邪魔になる物が『重さ』なのだ。 逆説的に言えば。『軽量級』神姫とは、速さを求めたが故に『軽く』ならざるを得なかった神姫とも言える。 それを知っている神姫とそのオーナーは、その為に、如何に自重を削るかを命題とする。 無論、装甲は極限まで切り詰める。 武器も必要な分だけあればいい。 速度を得る為の推進器も暴論を言えば、無いほうが良い位なのだ。 そして、そのバランスを如何に取るかがオーナーの見せ所とも言える。 装甲が過剰になれば、速度は目に見えて落ちるし、かと言って、無装甲では爆風や破片と言った避わしようの無い攻撃で致命傷を負ってしまう。 武器も過剰な装備は重さに直結するが、足りなければ敵を倒しきれない。 速度を得る為の推進器も、神姫素体に頼るのか、外付けの推進器を装備するのかで戦闘スタイルそのものが大幅に変わる。 斯様に軽量級神姫の扱いは難しい。 武器、装甲、速度。 このバランスを如何に取るか、最終的な結論は恐らく永遠に出ないだろう。 故に、軽量級神姫のオーナーたちは自らの最適解を目指し邁進する。 各々の解答を以って戦いに挑みながら……。 ◆ そして、原初の軽量級神姫のオーナーであった土方真紀は。 その解答をこう出した。 ◆ 「……自己修復……か。冗談みたいだな……」 「……ん」 チーグルとザバーカで付けたボディの傷が、二人の見ている前でフィルムの逆回しのように消えてゆく。 四本ものナイフが突き刺さった翼も、だ。 「私の装備は全てが分子機械(モレキュラーマシン)です」 彼女の装備、即ち。翼と装甲衣、そして双刀。 「何れも必要に応じて組み替えることで、多様な性質を帯び私の機能を補佐します」 鋭く高質化する事で刃に。 柔軟に風を孕む事で翼に。 幾重にも積層される事で鎧に。 言ってしまえば、フブキの装備は『分子機械のみ』だとも言える。 それ一つが多様な役目を果たすが故に。 「……一応言っておきますが、先ほどの攻撃も無意味ではありませんよ。私の装備を構成する12万の分子機械の内、数百は機能停止しましたから……」 「一応ストラーフの打撃は、掠めるだけでも軽量級神姫なら数発で戦闘不能になる威力なんだけどね……」 だが、フブキの外部装甲は修復が効く。 つまり小手先の小技や、アーマーから破壊して爆風でトドメを刺すような搦め手はほぼ無意味と言う事だ。 「……やっぱり、体の正中線をぶん殴るか、キャノンを直撃させるしかないと思う」 「だな」 「……もちろん、私もそれを警戒しているのですけどね……」 言ってフブキは軽やかに一歩飛びのく。 広げた間合いは、アイゼンにとっては格闘装備の使えない中距離以遠。 元より単純に撃った滑空砲が当たる相手では無い。 ならば、使用するべきは……。 「アイゼン!!」 「……ん」 抜き打ち気味に構えたアサルトライフルで発砲!! フルオートで弾幕を張り、半呼吸ほど遅らせて左右に滑空砲で榴弾をばら撒いて置く。 ライフルをかわす為に左右に避けたのならば、榴弾の爆風で巻き込める。 そうでなければ蜂の巣だ。 ……並みの神姫ならば。 「アイゼン、上だ!!」 「……ッ!!」 瞬時に跳び上がったフブキが、空中で翼を使って方向転換、即、加速!! アイゼンの頭上をキックで狙う。 「……このっ」 合わせる様にチーグルを突き出し、カウンターを狙うが、フブキは全身のバネと翼を使って衝撃を殺し、鋼鉄の拳の上に着地。 「ふっ」 振り抜かれ、伸びきった腕が弛緩する一瞬にあわせ、引き倒すように後方へと蹴る。 「……え?」 爪先から、鋭利な爪が伸び、チーグルを捕らえていた。 伸ばした腕を更に引っ張られたアイゼンが、重心を崩してつんのめる。 驚愕で見開かれた眼前に。 「ごめんなさい」 フブキの足爪が突き刺さった。 「―――アイゼンッ!!」 頭の奥のAIを守る為に、殊更堅牢に作られている頭蓋を引っ掻く音がした。 アイゼンの顔面を削るように振り抜かれたつま先には、湾曲した爪が三本。 その一つが、彼女の左目の位置を抉っていた。 「……ッ、く……」 アイゼンは左目を押さえ、よろめきながらもチーグルを振り回しフブキを追い払うが、しかし。 「アイゼン!! 大丈夫か!?」 「……問題ない、大丈夫。……左目取れただけ」 「だけ、じゃねぇ!!」 神姫センターのバトルなら、敗北をジャッジされるダメージだ。 だが。 「まだ敵は見えてるし、武器もある。……全然余裕」 「……っ」 祐一は一瞬判断に迷った。 元々、彼にはここまでするつもりは無い。 フブキを倒す為に、これほどの代価を払う必要性を、実の所まるで感じていない。 (試合ならコレで負けだし、普通に考えれば戦闘を止めるべきだけど……) 後続にはカトレアもいれば、他の神姫たちもこちらに向かっているかもしれない。 ここで、無理をしてアイゼンだけで倒す必要は、必ずしも無い。 だが……。 「……まだ大丈夫。……やらせて」 アイゼンには、撤退の意思は微塵も無かった。 ◆ 神姫バトルを始めてから5年。 四肢を破壊されるような大ダメージが無かった訳ではない。 だが、神姫にとって手足はある意味では『装備』だ。 交換も容易だし、必要に応じてチーグルなどを直に接続する場合もある。 だが。 頭部は違う。 それは不可分の『本体』。 破壊されたら、『死ぬ』部分なのだ。 そこに、これほどのダメージを負った事は一度も無かった。 当然だ。 フブキは、今までに戦ったどの神姫にも増して強い。 だから。 ……だからこそ。 ◆ 「……ねぇマスター。今、どんな気分?」 「……」 アイゼンの問に答えを探す。 だが、早鐘のような鼓動と焦燥に思考は乱れ、まるで纏まらない。 「……ね、マスター」 「心臓バクバク言っててそれ所じゃないよ」 「……ん。じつは私も」 こちらの会話を待つ心算なのか、動こうとしないフブキを見据えたままのアイゼンが背中越しに語る。 「……なんか。勝てるって確信が無いし、負けちゃうかも、って凄くドキドキしてる」 私に心臓は無いけど。と、続けた後。 「多分、CSCか何処か。……凄いオーバーワークでチリチリするの。 ……マスターもきっと同じだよね?」 「ああ」 深く考えずに、その余裕も取り戻せないままうなずく祐一。 「……でもさ、それ。マスターはよく知ってる感覚だよね?」 「え?」 「……好きでしょ?」 「……あ」 思い当たる。 「初めて敵と戦うとき。 凄く強い敵相手にピンチになった時。 絶体絶命で、でも。 ……まだ、勝ち目が残ってて、諦めきれない時……。 いつも『こう』だよね?」 RPGで。 シューティングで。 対戦格闘で。 ……武装神姫で。 遊んだ後に、一番楽しいと思い返すのは、何時だってギリギリの極限の瞬間を、だ。 「……なら」 「今が一番、『楽しい』状況……。だね」 「……ん」 そうだ。 まだ、負けた訳じゃない。 形勢は言うまでも無く不利だし、勝ち目は薄いけど。 皆無ではない。 「……一応聞いておくけど、まだ戦えるよね?」 「……当然」 言って、両の副腕を握りなおすアイゼン。 「よし。……ならもう一度だ」 「……ん」 答え、祐一のストラーフは微かに身を落とし、構えなおす。 「頼むぞ、アイゼン!!」 「……指揮は任せた!!」 答え、応え。 アイゼンが飛び出した。 ◆ (なるほど。……コレが本当の目的ですか) 気付いた彼女が密かに笑う。 (本当に、回りくどくて不器用なやり方です) 彼女を支配する感情は紛れも無くそれ。 (ですが、それでこそ私のマスターです) 主と共にあると感じた神姫が得る感情は、歓喜に他ならない。 ◆ アイゼンの突進に、フブキは全力を以って応じた。 左右に大きく腕を広げ、刀と翼を触れ合わせる。 分子機械を翼から刀に大幅に移し、武装を強化。 質量を増した分威力が上がり、重くなった分遅くなった剣速を翼で弾き出す事で補い、更に上乗せする。 「……行きます。―――奥儀『双餓狼』ッ!!」 暴風すら伴いながら、アイゼンを迎撃するのは左右からの同時斬撃。 対するアイゼンは左右のチーグルを刃に合わせる。 しかし、左右は逆に。 眼前で交差した副腕は、その距離を余力とし、圧倒的な一撃を柔らかく受け止める。 もちろん、勢いを完全には殺しきれない。 だが、その一撃がアイゼンに到達するのがほんの一秒ほど遅らせる事には成功した。 しかし、たったの一秒だ。 それはたった一秒敗北を後伸ばしにするだけの行為。 両腕を緩衝材に使い、塞がれてる以上、他に打つ手は無い……。 ……普通の神姫なら。 「けど。私の腕は、四本あるっ!!」 完全にフリーになっている素体の両腕。 それが届くのに必要な時間は一秒。 たったの一秒だった。 そして。 その一秒で充分だった。 装甲衣の襟首を掴んで全力で引き寄せる。 剣の間合いを越えるどころか、拳の間合いの遥かに内側まで。 「……つかまえた!!」 「―――なっ!?」 引き寄せられた顔面に、アイゼンもまた顔面をぶつけ、それを以って打撃とした。 「へ、ヘッドバット!?」 さしものフブキも、予測していなかった攻撃に面食らう。 素体の運動性ではフブキに分があるが、頑強さならストラーフの方が上。 更に、開いた右腕で追撃の拳。 「捕まえての殴り合いなら、ストラーフに敵う神姫は居ない!! 例えフブキでも、だ!!」 如何に破格の性能を誇ろうが、フブキは軽量級神姫だ。 打撃の速度を上げる事で、攻撃の威力を増すことは出来ても、純粋な腕力ではストラーフに及ばない。 足を止めた超至近距離での殴り合いならば、軽量級の神姫は重量級の神姫に絶対に勝てない。 「させません!!」 組合から離脱しなければ敗北すると判ったのだろう。 フブキは狙いを襟元を掴んでいる左腕に絞った。 だが、しかし。アイゼンにも逃すつもりは毛頭無い!! 「捕まえろ、アイゼン!!」 「……ん!!」 巻きつくように背中に回されるチーグル。 構成する分子機械の大部分を刀に委譲してしまった翼に、それを防ぐだけの力は無い。 更に、素体の両腕で抱きしめるように捕縛。 そのまま全力で締め上げる。 「べッ……、ベアバック……!?」 ギリギリと、締め上げられてゆくフレームが音を立てる。 「締め落せ!!」 「……っ!!」 こうなっては、最早脱出は不能。 アイゼンの勝ちが確定したようにも見えた瞬間。 「―――空蝉!!」 腕から掻き消えるような感触と共に、フブキの身体が理不尽な動きで戒めから離脱した。 一瞬で宙に逃れ、後ろに跳び退く忍者型神姫。 「……忍法?」 「装甲衣の分子機械を膨張させて脱ぎ捨てたのですよ。……脱ぎ捨ててしまう為、一度きりしか使えない手段ですが、もう二度と捕まらなければ良いだけの事」 確かに。装甲衣を脱ぎ捨てたフブキには、最早それを再構築し直すだけの分子機械が無い。 装甲衣だけでは不足だったのだろう。刀も翼も装甲衣と纏めて脱ぎ捨てた為、最早素体しか残っていない。 12万もの分子機械群は、フブキの身体を離れて無力化された。 もちろん再掌握する事で復帰は出来るが、1分ほど時間がかかる。 そして、それが戦闘中に不可能であることは明白だった。 ◆ 「……取りあえず、装備は奪えた、と。……これでようやく五分五分、かな?」 「……だね」 全ての武装を失ったフブキには、最早アイゼンに捕まる危険のある近接戦以外の選択肢が無い。 一方でアイゼンも、遠距離戦になってしまえば射撃で命中は見込めないため手詰まり。 故に、双方格闘戦以外の選択はありえない。 武装を全て失ったフブキに対し、アイゼンは未だにチーグルを始めとする機械化四肢を持っているが、素体の性能自体は数段下。 更にフブキの速度に対応する為にアクセラレータでAIに負荷を掛けているので、実際の戦闘時間は後数分。 加えて先ほど負った左眼の損傷を考慮すれば、実際には遥かに不利だ。 しかし、その差は、確実に戦闘開始時よりも狭まっていた。 そして何より。 (ペースを掴まれたのが厄介ですね……) フブキはそう思考し、目の前の相手の戦績を思い出す。 アイゼン。 そう名づけられたストラーフの真価は、実の所、よく言われるような再戦時の勝率ではない。 一言で言ってしまえば、彼女の恐ろしさはペースを掴む事にある。 相手の得意技を無効化し、頼りとする防御や回避を越えて一撃を与えてくる戦闘スタイル。 それがどれほど困惑を生むかは、実際に相対した神姫とオーナーでなければ分らないだろう。 強い神姫には例外なく得意とする戦術、戦法がある。 何も考えず、ただ強い武器を装備するだけでは精々、初心者相手に圧勝できる程度だ。 中級者には打ち破られ、上級者には片手間で粉砕される。 故に、強い神姫とは確固たる戦術、戦法を見出した神姫であり、それに特化し、予測されうる弱点をカバー出来た者こそが強者として名を馳せるのだ。 だから。 それを磨けば磨くほどに、打ち破られた時の衝撃は大きい。 そして、アイゼンはそれをする数少ない神姫だった。 (すでにこちらの武器である素早さと分子機械を破られました) アクセラレータという強引な手段を用いねばならなかったのは、もはやハンディキャップと言っても過言ではない反応速度の遅さゆえにだろう。 だが、経緯は如何あれ既にこちらの動きは概ね見切られている。 最早素早さだけで翻弄することは不可能だろう。 (分子機械もそれごと握り潰すと言う強引な方法で突破されましたし……) 分子機械の暴走を想定した緊急パージコマンド『空蝉』が無ければ、アレでフブキの敗北は確定だった。 フブキとストラーフの埋めようの無い腕力の差。 それを前面に押し出した文句の付けようの無い攻略法。 咄嗟に空蝉で逃れてしまったが、本来空蝉は戦闘用の動作ではない。 仕様として用意されてはいたが、それを勝利する戦術に組み込んでいた訳ではないのだ。 つまり。実を言えば、あのまま破壊されても良かったと思う位見事に、祐一とアイゼンのペアは『フブキ』という神姫を攻略していたのだ。 そして何より。 (切り札を卑怯とも言える手段で返されたのに、プラス要素だけを認識して即座に戦意を取り戻す切り替えの早さ) 神姫にとって最高のパートナーとなる素養を充分に持っているオーナー。 そして、それに応える神姫というペア。 真紀が邂逅を望み、果たせなかった相手。 それが今、目の前に居る。 「ふふふ」 それが。 たまらなく嬉しかった…。 ◆ 「お見事ですね、戦術の堅実さ、思考の柔軟性、装備の選択。……何れを取っても申し分ありません」 「あまり万人向けじゃない気もするけどね」 「……ん」 コクコクと頷くアイゼン。 「無難に、スタンダードな、などと言うコンセプトでは私には勝てませんよ」 射撃も格闘もこなし、回避もガードも選択しうる。 それではフブキと同じコンセプトだ。 その上で、現行の技術には無い分子機械を擁するフブキに一段劣る技術の同コンセプトでは勝てる筈も無い。 「……だから、その選択は正解です。私は分子機械と言うチートで成立した最強の神姫なのですから『万人向け』のコンセプトでは話にならない」 自らをズルであると認めた上でフブキは問う。 「……しかし、貴方がたはその最強を突破しました」 フブキを最強たらしめていた分子機械を打ち破った。 「しかし、その代価は貴方がたにも軽くはないでしょう?」 アイゼンのダメージは大きく、AIにもアクセラレータの負荷が重く圧し掛かっている筈だ。 「一応問いますが、ここで引く気は無いのですね?」 もちろん。 フブキにはその答えが分っていた。 「当然だ。……折角、最強の神姫が相手なんだ。……最後の最後まで楽しませてもらう」 「……ん」 こくりと、頷いてそれを肯定するアイゼン。 「……。……ふふ」 軽く、全身から力を抜くフブキ。 「……いいでしょう。かかってきなさい、悪魔型!!」 「……往く」 こうして、三度目の仕切り直しから。 こんどこそ最後の勝負が始まった。 ◆ 打撃。 打撃。 打撃。 双方、拳を中心に打撃の応酬を繰り広げるが、そのスタイルは別物だった。 牽制打を連続で繰り出し、渾身の一撃を打ち込む隙を作り出そうとするフブキに対し。アイゼンは大振りながらも必殺の一撃を確実に繰り出してゆく豪放なスタイルで応じる。 蹴りはどちらも存在だけ匂わせ、実打は撃たない。 格闘技において、蹴りは威力以上にデメリットが大きい。 振り上げた脚を捕らえられれば、その時点でほぼ敗北は必至。 脱する為に必要な実力差より、蹴りを使わずに相手を倒す方が力量が要らないのだ。 そして、双方にそこまでの実力差は無い。 素体と武装状態とは言え、確かに性能ではフブキが勝る。 だが、しかし。 5年と言う歳月を待機して待っていたフブキと違い、アイゼンには1週と置かずに繰り返してきた戦闘経験がある。 間合いの取り方、外し方。 打撃の使い分け。 そして、打撃以外の投げや掴みと言う選択肢の存在。 この場の誰もが気付かなかったが、それは実の所、武術家と猛獣の戦いだ。 基本性能を武器とする猛獣に対し、技で応じる武術家。 それは、アイゼンとフブキの戦いと同じ傾向を持っていた。 そして、唐突にアイゼンが打撃を変える。 今までの重い一撃から、フェイントも同然の軽い一打。 しかし、予備動作なしで繰り出されたそれは、確かにフブキの身体を捉え、一瞬浮かせる。 そこに。 今度こそ必殺の意思を込めた一撃が打ち込まれた!! 「…!!」 フブキの反応は速い。 撃ち込まれた機械腕の右ストレートに身体を絡み付かせ、そのまま一気に腕を奪いに行く!! ダメージは決して軽くないが、彼女の反応速度は寸での所でその打撃を察知し、身を引いて威力を殺している。 フェイントにかかって居なければ無傷で反撃できただろうが、それでもこの一撃で決めるつもりだったアイゼンの意図は外せた。 ならばこれで詰み。 身体全部を使ってチーグルの右肘に加重をかける。 「……このっ!!」 アイゼンが左拳でわき腹を狙うが、それより早く、フブキの膝がチーグルの肘をへし折った。 「……っ!!」 ダメージに怯んだ一撃ではフブキを吹き飛ばすのが関の山。 致命打には程遠く。 しかし、アイゼンは迷わず追撃を掛ける。 「……行け、アイゼンッ!!」 着地の硬直で避けられないフブキに、アイゼンは片腕を失ったチーグルとザバーカをパージ。 その勢いを加速に利用し渾身の右ストレートを放つ。 「……これで―――」 それが当たる直前。 フブキが消えた。 「―――!?」 知覚が追いつかない。 拳をかわしたフブキが、姿勢を崩したアイゼンに密着するように両手を重ね。 「―――破」 発勁。 横合いから放たれた衝撃に、自分の受けた技を認識する事も出来ず、アイゼンは吹き飛ばされた。 これが決着。 戦闘開始から15分ジャスト。 敗因は、アクセラレータの時間切れだった。 第36話:伏せられた真実?につづく 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る フブキ付き黒い翼の発売でようやくウチの(実質)ラスボスが日の目を見ました。 これの発売予告以前からフブキ+黒い翼でイメージしていたので嬉しい事、嬉しい事。 本編の方も、書き溜めてあるのでココから先は更新早めでいけると思います。 宜しければ、後もう少しだけお付き合い下さい。 と言いつつポケモンとかモンハンとか鉄の咆哮とか……。 もうすぐルーンファクトリー3出るし、世界樹Ⅲも発表だぁ!! 来年もきっとゲームが楽しい。 ALCでした~。 -
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第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-3」 2041年10月27日 A飛行場の片隅で天使型のエーベルたちが自分の武装パーツの整備を行なっている。 連日の戦闘で被弾した箇所や老朽化したパーツなどを交換したり修理するなどやることは多い。 エーベルが鼻歌を歌いながら自分の武装パーツを弄る。 エーベル「フンフンフウーーン♪」 シャル「ごきげんだな、どんな具合だ?」 エーベル「エンジンの油漏れがひどくてね、オイルクーラーの方はどうにかなったが、パッキンがなくて苦労しました」 シャル「で、どうしたんだ?」 エーベル「この間撃墜したテンペスタの廃材からかっぱらったんですよ」 リイン「シャルッ!!!」 リインが血相を変えてシャルに詰め寄る。 シャル「私たちのドラッケン戦闘爆撃隊は地上攻撃に専念させるようにマスターに言ったそうですね!!」 シャル「だったらどうした?」 リインが怒鳴る。 リイン「シャルはテンペスタとやるのが怖いんですか!!」 シャル「テンペスタと空戦してもムダだからな」 リイン「戦乙女のアイネスの連中に任せておいていいんですか!!俺の仲間はみんなテンペスタに叩き落されちまった!シャルの仲間もそうでしょう!!なぜですか!?あんたはソレで悔しくないんですか!?」 シャルががっとリインの胸倉を掴む シャル「リイン!!てめえェそれ以上知ったような口を叩いてみろ!!もう二度とキサマとは飛べないようにしてやるぞ!」 リイン「グッ!」 シャルはぱっとリインの胸倉を離すと去っていく。 リイン「へっ・・・チキン野郎め!」 横で聞いていたエーベルが舌打ちをする。 エーベル「おい、リイン!!」 リイン「なんだよ・・・」 エーベル「つまらんことを言うな、ちょっとやりやったぐらいのエース気取りで一人前の口をきくんじゃない」 リイン「俺はそんなつもりじゃ・・・」 エーベルはため息をつく。 エーベル「シャルだって何度もズタボロになりつつも帰ってきている」 リイン「何度も負け戦で臆病風に吹かれたって感じか?」 エーベル「・・・いいか、よく聞けよ小娘、テンペスタと戦うことだけがここの集団バトルロンドの戦闘じゃねえ、地上攻撃や支援攻撃も立派な戦闘だ」 リイン「・・・・」 エーベル「重装甲、重武装の戦闘爆撃機型のドラッケンで軽量高機動のテンペスタに空戦で勝つのは難しい。テンペスタを落としたいお前のガッツは分かるだがな、シャルは爆装した重いドラッケンでテンペスタのウヨウヨ待ち構えている所に味方の支援用の低空攻撃をかけてきているんだ、そしてそれをさらに続けようと言うんだ。上空を他の神姫に、俺やアイネスの連中を信じて任せてな」 リイン「そ、それは・・・」 エーベル「シャルがチキン野郎かどうか、よく考えろよ、その足りない頭でな・・・」 エーベルはそういうと再び自分の武装の整備を無言でもくもくと続ける。 2041年10月28日 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ 小川にB飛行場に補給を行なう旧式の輸送艦型MMSが数隻、小川を下る。 チーム名「マテハン」 □コルベット艦型MMS「アルバトロス」 Sクラス オーナー名「小野 幸助」♂ 31歳 職業 システムエンジニア □輸送艦型MMS「モントレ」 Cクラス □輸送艦型MMS「フェイサー」Cクラス □輸送艦型MMS「ラヴァトリ」Cクラス □砲台型MMS 「ブレア」Bクラス □砲台型MMS 「ザフィー」Bクラス □火器型MMS 「ノレマ」Bクラス オーナー名「橘田 勝」♂ 40歳 職業 印刷会社総務 シャル「敵チームの輸送船団だ!撃沈するぞ!」 ライラ「生意気にコルベット艦型なんて護衛に引き連れてやがる!」 チーム名「ドラケン戦闘爆撃隊」 □戦闘爆撃機型MMS「シャル」 Sクラス □戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス □戦闘爆撃機型MMS「セシル」 Aクラス オーナー名「伊藤 和正」♂ 27歳 職業 工場設備関係メーカー営業員 □戦闘爆撃機型MMS「リイン」 Aクラス オーナー名「伊上 直人」♂ 26歳 職業 総合卸商社営業員 シャルたちのドラッケン戦闘爆撃隊がロケット弾を積んで上空から急降下で攻撃を仕掛ける。 アルバトロス「レーダーに感有り、敵機確認!機種はドラッケン戦闘爆撃機4機を認識」 小野「対空戦闘方位3-2-0距離30に備え、このままの戦闘隊形を崩すな、後続の輸送艦隊に発光信号、対空戦闘用意!」 アルバトロスがチカチカと発光信号を発する。 輸送艦型神姫の甲板に上がっている砲台型神姫たちが砲台モードに展開し、迎撃の準備を始める。 橘田「対空戦闘用意っーー各砲台各個射撃はじめ!敵を近寄らせるな!」 ドドドドドドドン!!ズンズズウズン!! 輸送艦型神姫の甲板から砲台型神姫による激しい対空攻撃が行なわれる。 ライラ「おはッ、輸送艦風情がなかなかやるな!」 リイン「シャル!リインだ、殿をやらせてください!」 シャル「・・・」 シャルはリインの顔をじっと見る。 シャル「殿は砲火が集中するぞ!気をつけろ!」 リイン「わかっています!」 シャルはぐんと機首を下げると水面スレスレを飛ぶ、それに続くリイン。 アルバトロス「ドラッケン4機!輸送船団を狙っています!」 小野「いかん!アルバトロス、全速前進!なんとしても守れ」 コルベット艦型MMSがシャルたちの前に躍り出る。 アルバトロス「やらせるかァ!!」 アルバトロスは主砲の2mm単装砲をシャルたちに向かって撃ちまくる。 ドンドンドンドンドンドンドンドンッ!! ガキンバキンゴキン!!シャルの装甲板に命中し穴だらけになるが、シャルはひるまない。 シャル「こなくそ!これでも喰らえ!!」 シャルはグレネードキャノンを展開すると、アルバトロス目掛けて連続で撃ち込む。 ドゴオオオンドッゴオオンンッ!! アルバトロス「うぐおおおおお!!?」 アルバトロスの砲塔に命中し爆発が起きる。 ズンズンズウズズウウウウウン!! シャル「リイン!!ついて来ているか!?」 リイン「はい!!」 シャル「俺はさっきのコルベットの攻撃で満足に動けない!輸送船団をライラたちと一緒に血祭りにあげろ!」 リイン「了解!」 アルバトロス「ごほごほ、主砲塔のモーターが潰れました砲撃不能・・・消火装置作動、火災鎮火、SAM発射します」 アルバトロスは垂直ミサイルを連続で発射する。 ライラ「警告!ミサイルミサイル!」 ミサイルが山なりの弾道を描いてリインたちに襲いかかる。 リインはすかさずチャフフレアを放出する。 リイン「FUCK!」 バッババッバババン!! チャフフレアの欺瞞によってミサイルはあらぬ方向に命中する。 ズンズウウウン アルバトロス「ミサイル全弾はずれ!小口径砲による射撃を行ないます」 アルバトロスは格納式の機関銃座を展開し、リインたちに集中砲火を浴びせる。 ドドドドドドドド!! ライラ「てめえはしつこいんだよ!!」 ライラが機関砲をアルバトロスに向けて撃ちまくる。 ドガドガドガドガ!! アルバトロス「うわあああ!!ま、マスタァーーー!!」 体中を大口径の機関砲で撃ち抜かれ、弾薬庫に引火したアルバトロスは派手な水蒸気爆発を起こして轟沈する。 □コルベット艦型MMS「アルバトロス」 Sクラス 撃破 モントレ「ご、護衛のコルベットが!」 ライラ「邪魔なコルベットは沈めたぜ!」 リイン「よし!今だ!!ロケットランチャー全弾撃ちつくせ!」 バシュバシュバシュシュシュ!! ブレア「うわああ!」 ザフィー「に、逃げろ!」 ノレマ「NOOOO!」 橘田「か、回避全速!!」 モントレ「ま、間に合いませ・・・」 フェイサー「うわあああああああ!!」 ズドドドドオオンッ!!! 物凄い爆音と水柱を立てて、一気に3隻の輸送艦型神姫が木っ端微塵になってバラバラに吹き飛ばされ轟沈する。 □輸送艦型MMS「モントレ」 Cクラス 撃破 □輸送艦型MMS「フェイサー」Cクラス 撃破 □輸送艦型MMS「ラヴァトリ」Cクラス 撃破 □砲台型MMS 「ブレア」Bクラス 撃破 □砲台型MMS 「ザフィー」Bクラス 撃破 □火器型MMS 「ノレマ」Bクラス 撃破 ライラ「イーーーヤッハ!!」 セシル「まるでイワシ缶だぜェ」 リイン「やりましたね!シャル」 シャル「今日は久々に大量だな」 シャルたちは、勝ち誇ったように上空を旋回し、エンジン音を轟かせる。 リインがシャルのすぐそばを通る。 リイン「シャル、昨日はその・・・すまなかった・・・臆病者なんていってしまって」 シャル「本当に臆病ならリアルバトルの武装神姫なんかやらねーよ、ケガしないバーチャルのロンドやってるぜ」 リイン「それもそうだな・・・」 ライラ「そーいえば今日はいつものテンペスタの連中いねえな」 セシル「あいつらはマスターが女子高校生だからな、今週はテストの前だから大人しいんだよ」 ライラ「なるほど」 セシル「ということは、テストが終わった日が危険ということか・・・」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「ドラゴン-4」 前に戻る>「ドラゴン-2」 トップページに戻る
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花は咲き乱れて ※注意!18禁です! 登場人物 パンジーのマスター 友人に勧められ、神姫を初めて購入した男 うっかりさん パンジー 花型MMSタイプジルダリアの神姫 大人しい性格 書いた人:優柔不断な人(仮) ちらっ…ちらっ… 「どうしたのです、マスター?」 昨日ウチに来たばかりのパンジーが俺に言った 「いや…なんでもない…」 友達に勧められて初めて買った武装神姫 パッケ絵に惹かれて中身を良く見ずに買ってしまったのだが、まさか中身があんなにえっちなカッコだったとは… 「心拍数及び呼吸数が異常に上昇してるようですが、どこかお体の具合でも悪いのですか? 「いや、大丈夫だ…」 武装させればマシになるのだろうが、武装させる為には直視しなければならない マスター設定をするまでは耐えられたのだが、動き出したらもう恥ずかしくて恥ずかしくて… 「もしかして、私に何か到らぬ点でも?」 「そんなことはないよ」 「でも私が起動してから、ちっとも私の方を見て話して下さらないのですね…」 う…俺が悪いのに…罪悪感が… 「…クスン、申し訳ありません。私が到らないばかりにマスターに不愉快な思いをさせてしまって…」 「そんな事ないぞ!キミがとっても魅力的すぎるから、俺の気持ちが昂ぶるだけだ!昂ぶりすぎるから怖いだけだ!」 ようやく彼女を見ながら、思いをぶつける 「…ホントですか?」 「ああ、本当だ。キミは俺になんか勿体ないくらい眩しすぎるのさ」 「そういうことでしたら相談していただければ良かったのに。私、良い対処法を知っております」 「何?ホントか?」 「はい。古くから伝わる気持ちの昂ぶりを押さえる方法です」 俺の前に来る彼女、そしてちょこんと座り、足を上げ顔を真っ赤にしながら言った 「私の足を持ってゆっくりと『開いたり、閉じたり』してください…」 彼女の言うとおりにしてみる俺 「開いたり…閉じたり…開いたり…閉じたり…」 彼女の透き通るような白い肌、それが微妙に赤みを帯びている… その肌を隠すのはわずかばかりの白い布… 「なんか余計に昂ぶってくるような…」 「ヘンですね…昔から伝えられている方法なのに…?」 彼女のカラダを弄ぶように開いたり閉じたりする俺… …やば…理性が…ぷち… 「パンジー!」 俺はとうとう欲求に負け、彼女の胸へと指を伸ばした 「あっ…」 弱々しく抵抗する彼女。しかし神姫と人間の力の差は歴然だ むにゅ… 「柔らかい…」 「マスター…ダメです…」 彼女の抗議を無視し、胸をいじり続ける くいっ ブラを上にずらす。彼女の胸が丸見えになる 勿論その先端のピンクの突起まで 「あっ…恥ずかしい…」 彼女のささやかな抵抗が、俺の淫らな欲望を増大させる 「キミが悪いんだ…」 「え…?」 俺の言葉に目を丸くする彼女。体が硬直し、抵抗も収まる そんな彼女の体に顔を近づけ ぺろっ お腹から胸、顔まで舐める 「はうっ…私が…いけないんですか…」 「そうだ、キミがいけないんだ…」 もう一度舐める 胸の先端を刺激する 「はうっ…私の、どこがいけないんですか…」 ぺろっ 答えずに舐め続ける 「私が…悪いんですか…申し訳…ありません…」 ぺろっ 不意にしょっぱい味がして驚く俺 ふと見ると彼女は… 「申し訳ありません…マスター…私が…到らないばかりに…」 その小さな体を震わせて、泣いていた …俺は何をやっている? 今俺はなにをしている? 彼女の何が悪いんだ? 悪いのは俺だ 自らの欲望に負けた俺だ 「…マスター、泣いておられるのですか?」 俺は泣いていた 自分の愚かさに 自分の勝手さに 彼女を傷つけた事に… 「…ごめん」 胸から手を離し、箪笥へと向かう 「…あの」 引き出しを開け、ハンカチを取り出す 「ごめん、最初からこうすれば良かったんだ」 彼女にハンカチを掛ける 「…あ」 ハンカチで体を隠す彼女 「ごめん、キミは悪くない。悪いのは俺だ。恥ずかしがりながらも、キミの肌をみたかった俺の…」 「マスター…」 「俺はマスター失格だ。キミを守らなきゃいけないのに、キミを傷つけた。キミを汚そうとした。自分の性欲を満足させるためだけに!」 「そんなことないです…」 「…え?」 「マスターにそんな感情を起こさせた私が悪いんです…」 そういって立ち上がる彼女 「だから…」 顔を真っ赤にし 「私で鎮めてください…」 ハンカチを下に落とし、全てをさらけ出して 「私を…汚してください…」 彼女が言った 「…わかった」 彼女を優しく持ち、テーブルの上へと乗せ、仰向けに寝そべらせる そして、彼女に残った最後の砦…パンティを脱がす 「…あ」 彼女の秘部からはキラキラと光る物が… 「濡れて…いる…」 「恥ずかしい…」 「もっと濡らしてあげるよ」 そう言って秘部に舌を這わせる 「はうぅ…」 熱い吐息を漏らす彼女 そんな彼女の秘部を執拗に攻める俺 だんだん彼女の息づかいが荒くなってくる 「あっあっ…はぅ…あん…あうう…あっ…ああっ!…もう…ダメッ!」 そんな彼女の秘部に最後の一撃を与える 「ああ~~~~~っ!」 背中をピンと反らせ、達する彼女 「ふぅ、ふぅ、ふぅ、はぁ、はぁ…はぁ…」 そんな彼女の頭を、優しく撫でる 「…申し訳ありません…マスターを鎮めなければ…いけないのに…私だけ…」 「…じゃあ、休憩したらこっちも…」 「あ…大丈夫です…」 彼女の返事を聞き、立ち上がりスボンをおろす 「…あ…これがマスターの…おしべ…すごい…」 この表現を聞いて、ああ、やっぱりこの子は花型なんだなと思ってしまった 膝を付き、テーブルの上にいる彼女に男根を近づける 「それじゃ、頼むよ」 「…はい」 そういって男根に手を伸ばす彼女 「…うっ」 触れた途端に快楽が… 「あっ…大丈夫ですか?」 「大丈夫、気持ちよかっただけだから。だから続けて」 「はい…」 そう言って男根を撫で始める彼女 「うう…きもちいい…もうちょっと…強く…早くして…」 しゅっ…しゅっ… 彼女の擦る力が強くなり、速度も上がる しゅっしゅっしゅっしゅっ 「ああっ…先端も舐めて…」 ぺろっ…ぺろっ… 舌による刺激も加わる 先走りの液体と、彼女の唾液とで男根はすっかりビショ濡れになった ぬちゅっぬちゅっ… 濡れた卑猥な音が響く もっと刺激が欲しい… 「ちょっとストップ」 「…はい」 彼女を止める俺 「もう一回寝そべって」 いわれるままに寝そべる彼女 その上に男根を乗せる 「足で締め付けて」 「あ…恥ずかしい…」 そういいつつ足を絡め、締め付けてくれる彼女 「じゃあ、動くから。体をしっかりと固定してね」 テーブルに手を置き、動きに備える彼女 それを確認し、ゆっくりと腰を降り始める ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ… 足で締められた男根は、彼女の秘部とお腹へと擦りつけられる 「おっ…おおっ…すごいくもちいい…」 「んっ…はんっ…私も…ですっ…あん…」 腰を振るスピードを上げる俺 「おっ…おおっ!…もう…そろそろ…」 「はうっ…私もっ!…また…あううっ!…」 「はぁっ!…くっ…くぅっ!でるっ!でるぅっ!」 びゅくっ! 「はうっ!…はあああああっ!」 ビクン! 同時に達し、嬌声を上げる彼女の体へと精液をぶちまける俺 びゅくっ!びゅくっ!びゅくっ! 「うううっ…ううっ…はううっ…」 「ああん、マスター…スゴかったです…」 彼女の体は、俺の放った精液で全身ズブ濡れになった… 「そうしてあなたが生まれたのよ、菜種」 パンジーは目の前にいる種型MMSタイプジュビジー…菜種に向かって話しかける 「ふーん。パパとママって、出会ったときからラブラブだったんだ」 「おいおいパンジー、嘘を教えるなよ」 「えー、嘘なの?」 「一部だけよ」 「どこが嘘なの?」 「それはね───」 終わる あとがき エロ妄想スレに投下したネタを大幅加筆修正してみました ジルダリアの足って、めしべなんだそうで そこにかけたら… とここまで書いて、武装させてなかった事に気付く俺うっかりさん
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カード右下のアイコンについて 攻撃力(ATK) 防御力(DEF) スピード(SPD) 体力(LP) ブースト(BST) 個体値加算表 神姫固有武器補正 個体値の排出率 アップデート履歴 コメント カード右下のアイコンについて 個体値と呼ばれる。 いわゆるプラスアビリティ。 常時発動でマイナス補正は無い。 神姫やレア度は関係なく、アイコンの分だけ加算される模様。 ◆ or ◆◆ or ◆◆◆◆◆ 現在1個、2個、5個のパターンが確認されている。 5個パターンには武装Cost+10されているもの(通称6V、キャパオバ)が存在する。ステータスに差はない。 0個、その他のパターン、同アイコン複数パターンはない。 基本的にどのパターンも合計で+100の値がステータスに加算されるよう割り振られる。 正確ではないが単純な例として、 1V=100 2V=50 50 5V=20 20 20 20 20 つまり必ずしも5Vが強い訳では無いということ。 詳しい値はページ下部へ。 1Vにおいて以下は確認されていない。 黄色の足(スピード) 2Vにおいて以下の組み合わせは確認されていない。 黄色の足(スピード) + その他アイコン 赤色の剣(攻撃力) + 灰色のLP(体力) 緑色の盾(防御力) + 水色の円(ブースト) ※ただし期間限定で印刷出来た謹賀新年「ストラーフ」のみ黄色の足(スピード) +水色の円(ブースト)かつコスト+10の変則仕様、無論通常の神姫購入では存在しないパターンである。 【本当は武装Cost+10カードなのに裏面の印刷に反映されていないカードが存在する】 例:ゲーム内では武装Cost80表記なのにカード裏面では武装Cost70表記。 稼働初期、武装Cost+10(6V)神姫なのにカード裏面の印刷に反映されない不具合があったが、 これは2021年1月7日のアップデートで修正された。 プレイヤー達は「仕様」なのだと思っていたが修正で「不具合」だと理解。 1/6以前に印刷した手持ち神姫やフリマサイトの5Vが「本当は6Vなのかも知れない」と留意しておこう。 攻撃力(ATK) 一番左、赤色の剣のアイコン ゲーム内での正式な呼称は「攻撃力」 ATKのみ ATK+α 5つ全て +100 +50 +25 防御力(DEF) 左から二番目、緑色の盾のアイコン ゲーム内での正式な呼称は「防御力」 DEFのみ DEF+α 5つ全て +250 +125 +50 スピード(SPD) 左から三番目、黄色の足のアイコン ゲーム内での正式な呼称は「スピード」 現在5つ全てのアイコンが揃う場合にのみ出現。単体、これと他セットでの出現は確認されていない。 例外で期間限定で印刷出来た謹賀新年「ストラーフ」はBSTとの組み合わせである。 SPDのみ SPD+α 5つ全て なし +30 +25 体力(LP) 左から四番目、灰色のLPのアイコン ゲーム内での正式な呼称は「体力」 LPのみ LP+α 5つ全て +500 +250 +125 ブースト(BST) 左から五番目、水色の円のアイコン ゲーム内での正式な呼称は「ブースト」 BSTのみ BST+α 5つ全て +500 +250 +125 個体値加算表 ATK値は神姫/レアリティによって補正がかかっているため、表の通りではない。 ATK DEF SPD LP BST ATK (100) 0 0 0 0 DEF 0 250 0 0 0 LP 0 0 0 500 0 BST 0 0 0 0 500 ATK/DEF (50) 125 0 0 0 ATK/BST (50) 0 0 0 250 DEF/LP 0 125 0 250 0 LP/BST 0 0 0 250 250 SPD/BST 0 0 ? 0 250 ALL (25) 50 25 125 125 神姫固有武器補正 得意武器を装備するとATK値にプラス補正が、苦手武器を装備すればATK値にマイナス補正がかかる。 マスクデータだが、実際に装備した時のATKの上がり方や、神姫ハウスでの台詞、2021.1.28発売のカードゲーマーでおおよその判断ができる。 当wikiでは各神姫に個別で掲載。 個体値の排出率 この数値でほぼほぼ間違いなさそうである。 個体値 排出率1V 48%(12% 12% 12% 12%)2V 48%(12% 12% 12% 12%)5V 3%6V 1% 出典:5ちゃんねるバトコンスレ「武装神姫 バトルコンダクター part11」 479 アップデート履歴 日時:2021.5.26 内容:ATK以外の個体値の上方調整。当wikiは最新のもの。過去のデータは公式お知らせ参照。 コメント 名前 コメント
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バトルも終わり、記四季は彩女と共に席を立った。 「しかしあの狙撃手、恐ろしいほどの腕前でしたね」 「だぁな。俺もまさか、動けなくなるほどに正確とは思ってなかった」 来たときと同じように、着物の肩に彩女を乗せその場を去ろうとする記四季。しかし記四季のその行動は、女の声で遮られた。 「・・・・おじいちゃん?」 記四季が振り返った先にいたのは、サラを肩に乗せた春奈だった。 「・・・おぉぅ。春奈じゃねぇか。元気してたか」 突然の孫娘の登場で、記四季はばつが悪そうに頭をかく。 無理も無い。武装神姫はかなり市民権を得、一般にも普及し始めてはいるがまだかなりコアな部類に入る趣味だ。彼の周りには女性ユーザーが多いが、やはり男性ユーザーの方が圧倒的に数は多い。 見つかった相手が孫娘、ましてや記四季は老人である。何だかいわれの無い誤解を受けそうな空気だ。 「・・・・あー・・・つまりだな・・・・こいつはよ・・・ほら、アレだ・・・」 ボケ予防に買ったとか嘘をつくか? だが本当は妻が死んだとき、春奈の姉の都が寂しかろうといきなり送りつけてきたと言うのも別にいいかもしれない。 ・・・いや、そもそも自分は何故こんなにも混乱しているのか? 別にやましい理由が無いならば、真実を話しても構わないのではないか? しかしそれを言うのは都に悪い気がするし、なにより自分のプライドがそれを許さない。 ・・・どうしたものか、と記四季の脳が全力で回転していると 「お初にお目にかかります。記四季の神姫をしております。彩女と申します。春奈お嬢様のお噂はかねがね」 空気読んでない犬が、深々と座礼をしやがったのだ。 ホワイトファング・ハウリングソウル 第三話 『爺の心労』 「・・・つまり彩女ちゃんは、お姉ちゃんからのプレゼントって訳なんだ」 「・・・・応」 彩女が春奈に挨拶した後、なし崩し的にティールームに連れ込まれ(彩女の発案)店内で一番奥の席に座り(記四季、最後の抵抗)麦茶を注文したところで記四季は春奈に彩女の事を話していた。 「となると・・・まさかビルを袈裟切りしたのは・・・」 「はい、私で御座います」 神姫は神姫で話が盛り上がっているようだ。ようなのだが人間側が全く盛り上がってない。 別に春奈は普通にしている・・・というか記四季が“自分が神姫を持っている”事を気にしすぎて、春奈はどうすればいいのか対応に困っている。 彼の考え方は妙に古いところがあり、恐らくは女子どもが持つべき人形を男の、しかも老人の自分が持っていることを孫娘に知られたのがショックなのだろう。 ボケ予防に神姫を買う老人もいることだし・・・別に気にすることは無いと思うのだが。 「・・・そ、そうだ。彩女ちゃんってハウリンタイプだよね。なのになんで髪が白いの? 耳も生えてるし」 「・・・・・・なんでも、都が知り合いのカスタムメイカーから貰ってきたらしい」 「ふ、普段から甲冑着てるの?」 「・・・・家に送られてきたときは十二単を着ていた」 「お、おじいちゃんは、最近どう? 私はテストで赤点ぎりぎりだったよ」 「・・・・昨日イノシシ鍋食べた。・・・・・解体に手間取ったよ」 「・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・」 会話が続かない。 春奈は今、非常に困っていた。 その様子を少し楽しそうにテーブルから見ているサラは本物のサドだろう。八谷以外でこんなに困っている春奈を見るのは初めてだ。 彩女はというと暢気に茶をすすっている。あんな山奥で暮らしていると人付き合いが無いため、春奈には悪いがちょうどいい機会であると助け船を出さないつもりだ。 「・・・あ、あのさ・・・えぇと・・・そ、そういえばお姉ちゃんも神姫を持ってるんだよ。悪魔型と犬型の姉妹でね・・・」 「クロとハチ公か。知ってるよ」 「う、うん、それでこの間その二人がね・・・」 「・・・アヤメ、キシキはハルナが苦手なのですか?」 「違います。多分、お嬢様に私の存在がばれたのが問題なのでしょう。ほら、私達はマニアックな存在ではないですか。多分引かれるとでも思っているのでしょう」 「なるほど、まぁその心配は無用ですが。・・・しかし大した狼狽ぶりですね。ハルナもさることながら、キシキも無言で狼狽すると言う芸を披露するとは。いやはや七瀬一族、中々に奥が深い」 「・・・まぁ主も山に引き篭もってばかりではいけませんからね。たまにはこうして街に下りるようにしているのです」 「山に引き篭もる・・・随分アウトドアなヒッキーですね」 「事実その様なものです。あの竹が生い茂り、緑しかない景色の中では、あまり外にいると言う感覚がしません」 「ほほぅ、竹林ですか。少し見てみたいですね」 「それでしたら春奈お嬢様と是非お越しください。文字通り何も無い場所ですが、持てる限りの持て成しをさせて頂きますので」 「それはありがたい。ではそのうちにお邪魔させていただきます」 神姫は神姫で暢気なものである。 「それじゃ、またね。おじいちゃん」 「・・・・・・・・・・応。お前も元気してろな」 ティールームで一時間ほど話した後、春奈と別れ記四季は帰路についた。 行きは手に持っていた杖を、今は突いている。・・・背筋は真っ直ぐではあるが。 「今日はお疲れ様で御座いました」 「・・・全くだ」 彩女が微笑みながら言うと記四季は溜息をつきながら答える。 自分がいなければ主はここまで疲れなかっただろうと、彩女は思ったが気にしないことにした。 何分刺激の少ない山暮らしだ。たまにはこういうのも悪くは無いだろう。 「こんなことならムラサキんとこ行っとけばよかった・・・そうすりゃ心構えも出来たってのによ・・・」 「主、彼女は『アメティスタ』です。・・・確かに彼女の“能力”には目を見張るものがありますが。それにばかり頼っていてはいけませんぞ?」 記四季と彩女が暮らす山の入り口にある北白蛇神社。そこにいる『アメティスタ』は予言ができると言う。確かに彼女は他の神姫とは違い、どこか神秘的な美しさを備えていはいるが・・・彩女にとってはただの友人だ。 ちなみに、アメティスタが予言が出来ることは秘密にされている。彼女のマスターが騒ぎを嫌う性格だからだ。そのためアメティスタは自身の姿を見せないように、パソコンで予言したことを書いて印刷している。その精度はなかなかで好評なのだが、予言できる内容が日常に関すること(どこぞのスーパーがセールをするとか。明日は雨が降るとか)ばかりなので地域密着型の預言者とも言えるかもしれない。 「ならば明日こそはアメティスタに会いに行きましょう。ここ最近彼女と話していませんしね」 「・・・俺ぁむしろ神主の方に用事があるんだがな。まぁいいさ、明日行こう。今日はもう帰るぞ。このままじゃ帰る頃には真っ暗だ」 「御意。最近不逞の輩が増えたそうですし、騒動は避けたいですな」 「タバコ屋のタミさんとこだったか? この間空き巣が入ったのは」 「ですね。まぁいつも居眠りしていらしたようですし。空き巣も何も取らずに帰ったそうですが」 二人は話しながら、逢魔ヶ時の街を歩いていった。 ・・・・二人が家に着いたのは日が落ちてからの事である。 前・・・次